【9月26日 CNS】中国でフードデリバリーのドライバーによる交通トラブルが後を絶たない。「ドライバーのマナーより、短時間に必ず届けるというシステムに問題がある」という指摘を受け、デリバリー大手企業が新しい「対策」を打ち出したところ、今度は「消費者に問題責任転嫁をするな」という批判が起きている。

 中国では新型コロナウイルス感染症が拡大する以前から、会社や自宅でフードデリバリーを頼むことが定着している。大手の「餓了麼(Ele.me)」「美団外売(Meituan Waimai)」は「どこでも30分以内に配達する」を売り物にし、独自のアルゴリズム(計算方法)で交通情報を分析する即時配送システムに基づき、ドライバーに最短・最適ルートを伝えている。しかし、スクーターや三輪バイクに乗ったドライバーのスピード違反、信号無視、交通事故、逆走が相次いで問題となっている。

 ドライバーたちは短時間で配達できれば手取りが増え、逆に遅れれば罰金を科されることもある。交通ルール通り「最適ルート」を走っても間に合わない場合があり、「システムが交通トラブルを招いている」というドライバーの悲鳴が報じられるようになった。中国社会科学院研究員の孫萍(Sun Ping)氏は「ドライバーは即時配送システムや規約に従わざるを得ず、その結果、交通事故が急増している」と指摘する。

 こうした批判に対応するため、「餓了麼」は今月9日、新たな「対策」を表明。注文主がスマートフォンのアプリなどを通じて「もう5分待つ」「10分待つ」とドライバーに伝える機能を導入するとし、ドライバーに時間の余裕を与えるよう呼びかけた。「美団外売」もドライバーに8分間の「弾力的時間」を与えるとした。しかし、インターネットでは「注文主がドライバーをせかしているから、事故が多発しているというのか」「消費者に責任を押しつけているだけ。根本的な解決にならない」と批判が殺到した。

 対外経済貿易大学(University of International Business and Economics)商学院の范黎波(Fan Libo)教授は「企業の道徳的制約だけに依存せず、法的レベルの監督を強化すべきだ」と指摘する。

 北京大学経済学院(School of Economics Peking University)の曹和平(Cao Heping)教授は「配送システムのアルゴリズムに安全係数を組み込み、安全性を重視すべきだ。ドライバーや市民の安全を守り、刑事事件や訴訟を減らすことにつながる」と提言している。(c)CNS-中新経緯/JCM/AFPBB News