■可能性は無限大

 ブロックチェーン技術は、チケット販売にも大きく影響する可能性がある。

 欧州サッカー連盟(UEFA)は、8月に行われたレアル・マドリード(Real Madrid)対アトレティコ・マドリード(Atletico de Madrid)のUEFAスーパーカップ(UEFA Super Cup 2018)でブロックチェーン技術を使い、チケットをすべて携帯電話経由で販売して偽造を防止した。

 FCバルセロナ(FC Barcelona)のスーパースター、リオネル・メッシ(Lionel Messi)が昨年12月、イスラエルのスタートアップ企業「Sirin Labs」のブランド親善大使に就任したことも、サッカー界でブロックチェーンへの関心が高まっている表れと言える。Sirin Labsは、ブロックチェーン技術を用いた安全性の高い携帯電話を開発している会社だ。

 リバプール(Liverpool FC)やイングランド代表で活躍したマイケル・オーウェン(Michael Owen)氏も今年、世界のセレブが自分だけの「トークン」をつくり出せる香港発の仮想通貨プラットフォーム「ジーコエックス(GCOX)」に投資を行った。オーウェン氏は「間違いなく、ブロックチェーン技術には未来が約束されている。可能性は無限大で、まだまだ活用の余地がある」と話している。

 ごく小規模ではあるが、ブロックチェーン技術が不正を防ぐ手立てになると信じ、技術を移籍金や選手給与の支払いに使うクラブも現れ始めている。

 ジブラルタル・ユナイテッド(Gibraltar United)は7月、世界で初めて選手の給与を仮想通貨で支払ったクラブとなり、トルコの小クラブであるハルヌスタスポル(Harunustaspor)は今年初め、ビットコインで移籍金を支払ったこちらも世界初のクラブとして話題を呼んだ。

 ジブラルタル・ユナイテッドのオーナー企業のトップで、8月にはイタリア・セリエCのACリミニ(AC Rimini 1912)の株式の25パーセントを仮想通貨を使って取得したパブロ・ダーナ(Pablo Dana)氏は、「ブロックチェーンはサッカー界に透明性をもたらす」と考えている。ブロートン氏も同意見で、「選手の登録簿や証明書をブロックチェーン上で保有するようにすれば、移籍や保有権といったシステムの透明性が増す可能性があります」と話している。

 他には、ビッグデータ分析と組み合わせて、スター候補の発掘にも使える可能性があるという。欧州クラブ協会(ECU)のオリビエ・ヤロシュ(Olivier Jarosz)氏は「200人のスカウトを派遣しなくとも、データベースを通して特に有望な選手を見つけ出せるようになるかもしれない」と話している。

 一方で警鐘を鳴らす人もいる。ロンドンサッカー取引所(LFE)のサム・ジョーンズ(Sam Jones)氏は、ブロックチェーン技術を使った新しい仮想通貨に対して「自分で自分を守ることはできません」と話し、「希望的観測に頼ることになります。そして、希望的観測こそがバブルが起きる大きな原因の一つなのです」と続けた。(c)AFP/Mathieu GORSE