■深刻な危機に直面している民主主義

 一方、人権活動家らは、世界各地にみられる権威主義者や独裁者が、グローバル化や産業の衰退、テロ、移民流入に対する国民の不満を利用して自らの行為を正当化していると警鐘を鳴らしている。

 人権監視団体「フリーダム・ハウス(Freedom House)」によれば、民主主義は2017年に個人の自由が12年連続で衰退したことが分かっており「この数十年で最も深刻な危機に直面」しているという。

 また、トランプ政権下の米国は、他国で起きた問題行為を非難する立場でいられるほどの倫理的権威をもはや失い、欧州はハンガリーとポーランドで台頭したナショナリストに悩まされていると指摘する声もある。

 1990年代、フランシス・フクヤマ(Francis Fukuyama)氏をはじめとする知識人は、リベラルな民主主義と資本主義が共産主義や全体主義に対して優越する正当性を獲得し、人類がついに「歴史の終焉(しゅうえん)」に到達したのではないかと問い掛けた。

 しかし20世紀の終わりを待たずして、専門家らは半独裁国家の台頭に警鐘を鳴らした。民主主義と独裁制の中間に位置しているのはトルコやロシアなどの国だ。

 中国は、政治的自由のある多元的社会を構築するという考えからは徹底的に距離を置いてきた。しかも急速に経済成長を遂げ、軍事力を拡大してきたことと相まって、反民主主義型の政体の見本としてその役割を果たしている。

■独裁者を非難する責任

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)のケネス・ロス(Kenneth Roth)代表は、民主主義的な指導者には、独裁政治や、著しい抑圧によって権力を握り続けようとする独裁者を非難する責任があると主張する。

「独裁者の政策には中身がないこと、そして権限を付与された指導者が自分は大多数の国民の声を代弁しているのだと主張する危険性を指摘することは、民主主義的な指導者らの大切な務めの一つだ」

 ロス代表は、中国政府がベネズエラやジンバブエなどの抑圧的な政権と密接な経済的利害関係を結んでいることを例に挙げながら、「中国は、世界中の独裁者を経済的に支援し、中国の独裁体制を批判する声を封じようとしている。リベラルな民主主義の国でも同様に」と指摘している。(c)AFP/Fabien ZAMORA and Adam PLOWRIGHT