【3月13日 AFP】中国の全国人民代表大会(全人代、National People's Congress、国会に相当)では今月、国家主席の任期上限を撤廃する改憲案が圧倒的多数で可決され、本来なら2023年に任期が切れるはずの習近平(Xi Jinping)氏が、毛沢東(Mao Zedong)に並ぶ最大権力を持つ「終身国家主席」となる道が開かれた。形式的な議会として知られる全人代での決定について専門家らは、ナショナリストや独裁者が政権を握る流れが世界的に広がっている証拠だと指摘している。

 かつて先進国の多くの知識人や政治家は、国際貿易に参入する中国が民主主義体制を確立するのは必然だと考えていたが、今回こうした判断を中国共産党が下したことで、一党支配体制を続ける同国が民主主義体制を採用する可能性はさらに低くなった。

 こうした中国の動きは、個人の人権や法の支配、言論の自由に基づくリベラルな民主主義型の政治形態が支持を失う代わりに、より独裁主義的な政治形態に転向する国が増えてきているという世界的な潮流に合致する。

 英オックスフォード大学中国センター(China Centre at Oxford University)のジョージ・マグヌス(George Magnus)准教授は、「今の私たちはリベラルな民主主義型の政治形態こそが標準的だと捉えがちだが、それは違う。人類史全体で見れば、民主主義の歴史は国際秩序の観点ではとても浅い」と指摘。反自由主義な指導者を立てた政権は「私たちが慣れ親しんできたような民主主義型のシステムを受け入れない」と付け加えた。

 こうした反自由主義な指導者としては、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領、トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領らが挙げられる。いずれも、投票で選出されたものの、政権の座に就いてからは民主主義的な規範を踏みにじってきた指導者ばかりだ。

 欧州ではハンガリーのオルバン・ビクトル(Orban Viktor)首相が一種の「非自由主義的な民主主義」と呼ぶ政治原理を象徴する存在となり、また米国には世界中に広がる攻撃的なナショナリズムを体現したドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領がいる。トランプ大統領が唱える「米国第一主義」、そして連邦捜査局(FBI)や司法制度、報道の自由に対する同氏の攻撃によって、米国の政体における民主主義的な抑制と均衡の真価は試されることとなった。