【3月7日 AFP】イングランド・プレミアリーグのアーセナル(Arsenal)の指揮官に就任して以来、最悪のシーズンを過ごしているアーセン・ベンゲル(Arsene Wenger)監督にとって、ACミラン(AC Milan)と対戦するヨーロッパリーグ(UEFA Europa League 2017-18)決勝トーナメント2回戦は、窮地に追い込まれている自身の立場を守る最後のチャンスになるかもしれない。長期政権を築いてアーセナル史上最も偉大な監督と言われてきたベンゲル監督は現在、評価を地に落としてクラブを去らなくてはならない危機に直面している。

 現在のアーセナルは、公式戦最近13試合で8敗を喫し、連覇のかかっていたFAカップ(FA Cup 2017-18)では2部ノッティンガム・フォレスト(Nottingham Forest)の前に敗退すると、2試合連続で対戦したマンチェスター・シティ(Manchester City)には、フットボールリーグカップ(England Football League Cup 2017-18)とリーグ戦で力の差を見せつけられた。

 さらに4日の試合でブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンFC(Brighton & Hove Albion FC)にも敗れて公式戦4連敗。リーグ首位のシティとは勝ち点33ポイント差、来季の欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2018-19)出場圏内との差も13ポイントに拡大した。

 そうした悲惨なシーズンを過ごす中で、ベンゲル監督がアーセナルで過ごした約22年の日々は、痛ましい結末を迎える可能性が出てきている。ブライトン戦では「ベンゲル出て行ってくれ」と怒りのチャントを歌うファンもいた。ベンゲル監督が批判にさらされるのは今に始まったことではないが、チーム力の低下が今までになく明らかになる中で、指揮官に対する逆風もかつてなく強まっている。

 2014年には敵地での敗戦後、列車に乗り込む際に口汚くののしられたことがあったし、昨季は解任を求める声がしつこく残る中で契約延長を決めた。しかし、そうした苦難の時期も現在ベンゲル監督が呑み込まれつつある荒波に比べればかわいいものに思える。

 ベンゲル監督への支持が劇的に低下していることを示すかのように、1000人以上の会員を抱えるアーセナルのファン団体「アーセナル・サポーターズ・トラスト(Arsenal Supporters' Trust、AST)」の調査では、88パーセントが今季限りでの契約打ち切りに賛成した。ASTの広報は「われわれの調査では、ベンゲルに対する大きな愛着と敬意が証明された一方で、彼がもはやクラブを前進させることはできないとの見方も示された。先を見越して行動し、後回しにするのではなく早めに決断してほしい。それがわれわれからクラブへのメッセージだ」と話している。

 まだ無名に近かった1996年の就任時、新聞各紙から「アーセンって誰?」とキツい歓迎を受けたベンゲル監督は、ライバルたちのはるか先を行くスポーツ科学の知識と世界中に張り巡らせたスカウト網を駆使し、プレミアに革命を起こした。驚異の無敗優勝を達成した2003-04シーズンを含め、プレミア制覇は通算3回を数え、2006年にはチャンピオンズリーグ決勝に進出し、FAカップは7度制した。

 ところが、自身の革新的な手法にライバルたちが追いついてくると、ベンゲル監督はその状況に対応できなかった。マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)を率いたアレックス・ファーガソン(Alex Ferguson)元監督が複数の偉大なチームを作り上げたのとは対照的に、ベンゲル監督はティエリ・アンリ(Thierry Henry)やパトリック・ビエラ(Patrick Vieira)、デニス・ベルカンプ(Dennis Bergkamp)といった象徴的な選手が去ると、「第2幕」以降はそれに匹敵するインパクトを残せなかった。

 皮肉にも、愛弟子の一人であるアンリ氏は先日、かつての恩師の後を継ぐことへの関心を示し、ベンゲル監督をさらに追い込んでいる。アンリ氏は「あくまで求められたらの話だが、愛する場所から助けを求められて、イエスと言えない人間はいない」と話している。(c)AFP/Steven GRIFFITHS