■ ビニシウスは「地に足が着いている」

 フラメンゴのU-17で2年間ビニシウスを指導したコーチは「ボールを持ったときのプレーが常に信じられないくらい速く、テクニックも最高水準、しかもアドリブ能力も非凡なものを持っている」と評している。

 ビニシウスは今月、チームがリオデジャネイロ州選手権の前期にあたるタッサ・グアナバラを制し、キャリア初タイトルを手にした。ボタフォゴFR(Botafogo FR)に3-1で勝利した試合では、ゴールを奪った後に対戦相手のサポーターの泣きまねをするかのように目をこするという、挑発的な面も見せた。

 この行為は大きな騒ぎとなり、ボタフォゴが決勝で使われる予定だったクラブのホームスタジアムの使用を拒否するという事態にまでなった。それでもフラメンゴユースは、またしてもビニシウスのゴールでボアビスタ(Boavista SC)を2-0で退け、優勝を果たしている。

 ほかならぬネイマールが、対戦相手のファンをからかえなくなれば「サッカーが退屈になる」とツイッター(Twitter)でつぶやき、ビニシウスの行動を擁護している。しかし、どちらも素晴らしい才能の持ち主という点を除けば、現在のスターとスター候補の間に共通点は多くない。

 ビニシウスが11歳のときにボタフォゴのユースを統括していた人物は、甘えん坊のようなところのあるネイマールに対して、ビニシウスは地に足が着いているという。

「たくさんの選手の中で常に一番だったにもかかわらず、あの子はちょっとした問題すら起こしたことがない。練習に遅刻したのも一度も見たことがない。とても良い子だったよ。まわりの人間に恵まれていたんだろうね。一家はそんなに裕福ではなかったが、父親は決して息子をお金儲けの道具にしようとはしなかった」

 その機会は何度もあった。13歳のときにはコリンチャンス(Corinthians)の獲得候補に入り、その1年後にはクルゼイロEC(Cruzeiro EC)が父親の仕事まで用意した。イングランド・プレミアリーグのアーセナル(Arsenal)からも誘いがあった。それでも、レアルが契約をまとめるまで、ビニシウスはフラメンゴに残った。

 コーチは「もうすぐいなくなると思うと少し寂しいが、あれだけのオファーをもらったらクラブに選択肢はない。才能の面でも、性格の面でも、欧州サッカーで成功するチャンスは十分にある選手だ」と話した。(c)AFP/Louis GENOT