■ソウル市民の犠牲者は初日で6万5000人に

 米カリフォルニア(California)州にあるシンクタンク「安全保障および持続性のためのノーチラス研究所(Nautilus Institute for Security and Sustainability)」の2012年の研究によると、北朝鮮はソウルに到達可能な少なくとも700基の170ミリ砲と240ミリ多連装ロケット発射装置を保有している。

 ただし、それらの兵器の信頼性は疑わしく、2010年に北朝鮮軍が韓国の延坪島(Yeonpyeong Island)を砲撃した際に、砲弾170発のうち約4分の1が効力を持たなかったことからも、すぐに発射可能なのは全体の3分の2程度だろうと同研究は指摘している。

 そうした前提の上でノーチラス研究所の推計では、核を使用しない攻撃であっても、最初の1日でソウルでは民間人約6万5000人が死亡し、その大半は最初の3時間での犠牲者で、1週間後までに死者数は計8万人に達するとしている。この報告書をまとめたロジャー・カバソス(Roger Cavazos)氏は、「北朝鮮側は最終的に自国の政権が崩壊する前に大規模な戦争を仕掛け、数万人を殺りくし、甚大な被害を生じさせることができるだろう」と語る。

 シナリオ通りに進めば、その後、数分以内に米軍と韓国軍が反撃を開始。ソウル市民は市内各地に多数ある地下シェルターに避難するため、その後の死者数は急速に減るという。両軍による反撃で、北朝鮮側の砲弾は毎時約1%ずつ破壊され、1日後には4分の1近くが壊滅する。そして戦闘の大半は4日以内に終了する。

 韓国が発表した2016年の防衛白書によると、朝鮮半島で戦争が勃発した場合、米軍は兵力69万人、艦船160隻、航空機2000機を展開するとされている。これ以外に、すでに韓国には米兵2万8500人が駐留しており、韓国軍は62万5000人の兵力を持っている。

 米韓両軍はテクノロジーの面でも北朝鮮軍を圧倒しているため、どのようなシナリオをたどっても北朝鮮側の敗戦に終わるとされるが、犠牲はどの程度まで及ぶのだろうか。