【10月31日 AFP】米大リーグ(MLB)のヒューストン・アストロズ(Houston Astros)は、ワールドシリーズ初制覇を成し遂げることによって、テキサス(Texas)州南部を襲ったハリケーン「ハービー(Harvey)」の豪雨と大規模な洪水で壊滅的な被害を受けた地元の士気を高めたいとしている。29日に行われたシリーズ第5戦の激闘を13-12で制したアストロズは、3勝2敗でタイトル獲得に王手をかけた。31日の第6戦は、再びロサンゼルス(Los Angeles)に舞台を移す。

 2か月前の遠征中に地元がハリケーンに襲われたアストロズは、ヒューストン(Houston)住民の多くが自宅を破壊されて途方に暮れるなか、ホームゲームの数試合をフロリダ(Florida)に変更することを余儀なくされた。アストロズのダラス・カイケル(Dallas Keuchel)投手は「地元ヒューストンが甚大な被害を受けたとき、自分の家が破壊されたような気持ちになった。それ以降はその気持ちとともにプレーしてきた」と語った。

「地元がどうなっているか何もわからないままロードで3試合を行っていたときは、とにかく落ち着かない気持ちだった。その時点では、支援活動するために戻ることもできなかったんだ。自分たちは試合をしながら『おい、ヒューストンと被害に遭ったみんなのために今季を締めくくろう』と話していた」

 懸命に復興を目指す地元の励みになるべく、ユニホームに「ヒューストン・ストロング(Houston Strong)」のスローガンが書かれたパッチをつけているアストロズのA.J.ヒンチ(A.J.Hinch)監督は、「われわれは、この街の代表者としてこのパッチをつけている。ヒューストンの一員であることは誇らしい。チームとこの街がお互いに呼応し合っているのは、自分にとって最高の誇りだよ」と述べた。

 ヒンチ監督はまた、ファンの献身的な応援に報いるのは、チーム創設55年で初のワールドシリーズ制覇を成し遂げることだとして、「それが地元にとって重要なことだ。この街やチームが遭遇している状況についてはよく理解しているが、われわれはこれを正しい未来に向かって維持していけるはずだ。このチームのファンは、素晴らしい盛り上がりをみせている。すごい熱狂ぶりだ」と語った。

 しかしながら、今プレーオフで最後まで生き残る奮闘を示してきたアストロズに対し、ファンは同等の情熱を傾けることが難しいかもしれない状況に置かれており、クリス・デベンスキー(Chris Devenski)投手は、チーム全員が地元住民を襲ったハリケーンに心を痛めていたと明かした。

「この街がたくさんの重荷を背負っていることは明白だ。自分たちが遠征していた最中にこうした悲劇が起きてしまい、自分も含めてクラブハウス全員がそれぞれ心を痛めていた。自分たちはできる形で支援活動を行ってきた。それはとても特別なことであり、地元のためとなれば、なおさらそうだといえる」

■「人々はすべてを失った」

 復興支援によってチーム一丸となった様子を見守ってきたアストロズのランス・マッカラーズ(Lance McCullers)投手は、「できる限り、ヒューストンの助けになることを望んでいた。自分たちがどれだけこの街を愛し、心配しているかということを示したかった」と語った。

 マッカラーズはまた、当時の光景や記憶が消えないなか、ロッカールームに飾られた写真がすべてを失った人々のことを心にとどめ、タイトル獲得を目指すアストロズに大きな影響を与えているとしている。

「それがチームの団結につながった。ロッカールームには、まだ当時の写真が張ってあるんだ。今でも自分たちの思いをはせられるようにね。なぜなら、ここにいる人たちは懸命に努力して、大勢の理解を超えるような状況を経験してきたからだ。たくさんの人々がすべてを失った」

「だから、自分たちは数時間でも野球をすることで、被災者の人々に少しでも喜びを与え、目の前のことから逃れられるようにしていきたい。それができれば、本当に素晴らしいことだ」(c)AFP/Jim SLATER