【10月23日 AFP】世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム(Tedros Adhanom)事務局長は22日、ジンバブエのロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領(93)をWHO親善大使に任命する決定を撤回した。任命をめぐって各方面から激しい批判が出ていた。

 エチオピアの元保健相で7月にアフリカ出身者初のWHO事務局長に就任したテドロス氏は先週、心臓まひや脳卒中、ぜんそくなどの非伝染性疾病との闘いをアフリカ全土で支援する親善大使への就任をムガベ大統領に打診。ジンバブエを「国民皆医療保険制度や健康増進を政策の中心に位置づけ、全国民に医療を提供している国」と絶賛した。

 しかし、公衆衛生の専門家や活動家、米英カナダなどのWHO加盟国から、37年に及ぶムガベ大統領の独裁政権下でジンバブエの医療制度は破綻したと非難の声が上がった。

 テドロス氏は「数日間、ムガベ大統領の親善大使任命について熟考し、最終的に任命の撤回を決めた」と声明で表明した。

 英首相官邸はツイッター(Twitter)への投稿でこの決定を歓迎。カナダ外務省も任命撤回を評価する声明を発表した。カナダのジャスティン・トルドー(Justin Trudeau)首相は先に、ムガベ氏の任命は「たちの悪いエープリルフール・ジョークだと思った」などと語っていた。

 国連の活動を監視する国際人権団体「UNウオッチ(UN Watch)」は、ムガベ氏の親善大使任命を「ばかげた」ことだとして、経緯の調査を要求。「テドロス氏ほど見識ある政治家がなぜ、人権活動家を弾圧し、民主化運動を踏み潰し、アフリカの穀倉地帯だったジンバブエとその国の医療制度を機能不全にしてしまった男に栄誉を与えようと決めたのか」と疑問を呈するとともに、「裏があるに違いない」と指摘している。(c)AFP/Ben Simon