■アートかドラッグか

 FAROで教えるフォトジャーナリストのヘスス・ビジャセカ(Jesus Villaseca)さんは、「ここではギャングを相手に、どれだけ多くの若者を勧誘できるかを競ってるようなものだ。文化かそれともドラッグかとね」と語る。

 警察は、この地区を取り巻く状況に見て見ぬふりだという。ここには刑務所が2つあるが、大学はない。18年前、この場所にFAROが設置されて以降、同様の施設が、同じく犯罪多発地域3か所に設けられている。

 ビジャセカさんの生徒の一人、エミリアノ・ロペス(Emiliano Lopez)君はまだ12歳だが、6歳の時から写真を撮っている。テーマとして特に力を入れているのは抗議デモだ。「デモの写真を撮ることは、人々に声を与える一つの方法。そして僕が文句を言う方法の一つでもある」

■同級生は死んだか無職、もしくはギャングのメンバー

 アラム・ヤエル・ベルナル(Alam Yael Bernal)さん(23)は、ほぼ「無理やり」にFAROに連れてこられたときのことを覚えている。11歳のときに銃の撃ち合いの中で母親が殺され、父親も同じ事件で服役してしまった。それ以降は親類の家で暮らしていたが、おばがベルナルさんを施設に連れてきたのだという。

 ベルナルさんは、同級生の多くは死んでしまったか、仕事がないか、もしくはギャングの一員になったかだと話す。

 彼は今、FAROで政治学を学んでいる。政治や社会的正義を伝えるジャーナリストになりたいのだという。「何も信じていなかった。だから、このセンターも信じていなかった。でも、ここのおかげで、抜け出す道を見つけることができた」とAFPの取材に笑顔で語った。(c)AFP/Anna CUENCA