【2月6日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の牙城となっているイラク第2の都市モスル(Mosul)西部で、ISの戦闘員が移動経路を確保するため民家に勝手に穴を開けている上、その労賃としてその家の持ち主に金銭を要求していると、複数の地元住民が5日証言した。政府部隊がモスル東部をISから解放する中、戦闘員は資金不足に陥っているもようだ。

 請求額はわずか7000イラク・ディナール(約600円)だが、まさに踏んだり蹴ったりだと住民らはこぼしている。モスル西部では、政府部隊による奪還作戦に備えてIS戦闘員が防御体制を強化している。

「ペプシ(Pepsi)通り」として知られる地区の住民、アブ・アサド(Abu Asaad)さんは「ダーイシュ(Daesh、ISのアラビア語名の略称)は有無を言わせず私たちの家の壁に穴を開けている」「ただ家を壊しただけの作業員に7000ディナールを支払うよう住民に強要している」と語った。

 アサドさんによると、他にも数百人が同様の被害に遭っているという。

 IS戦闘員らは住民に対して、徴収したお金は治安部隊からのモスル西部防衛に充てると説明したという。

 モスルはISがイラク国内に持つ最後の主要拠点で、先月に東部を政府部隊が完全制圧。昨年10月17日に開始した大規模な奪還作戦で重要な局面の一つが終了していた。

 ISによる報復を恐れてフルネームを明かさなかったアサドさんは「やつらは私たちに、穴の開いた家に残るか、それとも家を去るかを選ぶよう迫った」と話した。

 モスル西部では大半の世帯に電気がまったく、あるいはほとんど供給されておらず、冬場は通常、気温が氷点下まで下がる。

 隣接する民家に数珠つなぎに開けられた穴は、地上のトンネルのような役割を果たす。ISの戦闘員はそれを使うことで、イラク政府部隊や米国主導の有志連合による空爆の際に身を守りながら移動できる。(c)AFP/Ammar Karim and Jean-Marc Mojon