■不穏な現実隠す?

 ルペン氏はエナンボーモンなどで収めた勝利も追い風に、大統領選で番狂わせを演じることを目論む。4月に実施される第1回投票で上位に入るのはほぼ確実。5月の決選投票では中道のエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)前経済相か、野党・共和党の保守派フランソワ・フィヨン(Francois Fillon)元首相に敗れるとの予想もあるが、フィヨン氏は妻らへの不正給与疑惑が浮上し、先行きは混とんとしてきている。

 姓を伏せることを条件に取材に応じた地元フォークリフト運転手のバスティヤンさん(32)は、この町でのFNの実績から「ルペン大統領」の誕生に魅了されていると明かす。「地方レベルで公約を果たせるのなら、国レベルでも同じことができるだろう」

 ルペン氏は前回2012年大統領選の第1回投票で、エナンボーモンでは35%の票を獲得してトップに立った。ただ、反ユダヤ主義者として知られ過去に有罪判決を受けたこともある父親のジャンマリ・ルペン(Jean-Marie Le Pen)前党首のマイナスイメージが根強く、全国では社会党のフランソワ・オランド(Francois Hollande)氏(現大統領)、ニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領(当時)に次ぐ3位に終わった。

 ルペン氏は今回、FNを勝利に導くため、選挙運動のシンボルに真っ赤なバラを採用したり、インスタグラム(Instagram)に愛猫たちと一緒に写った画像を投稿したりして、自身のイメージを和らげることに気を配る。

 ただ、エナンボーモンの野党勢力や非政府組織(NGO)などからは、FNはイメージを取り繕って不穏な現実を覆い隠しているとの批判の声も上がる。

 エナンボーモンに限れば不協和音は少数派の中から聞こえるだけだが、ルペン氏が勝利するには、FNを民主主義の脅威とみなす大勢の穏健派との戦いを制さなければならない。

 元自動車工場従業員のミシェル・ファソン(Michele Facon)さんは「マリーヌに大統領になってほしい」と期待を寄せる一方で、実現する望みは薄いとも認める。「彼女は決選投票で敗れるだろう。FNは今も人々にとって脅威だから」 (c)AFP/Daphné BENOIT