【8月27日 AFP】タイで王室を侮辱したとして不敬罪で数年間、服役していた女性3人が27日、王室の恩赦で釈放された。同国の人権団体「Thai Lawyers for Human Rights(人権のためのタイ人弁護団)」に所属する弁護士がAFPに明かした。

 タイの不敬罪は世界でも最も厳しい類いの内容で、王室に対する批判とみなされたどんな場合にも、最長15年の禁錮刑が科せられる。2014年に「王制護持」を掲げる国軍がクーデターで政権を掌握して以降、不敬罪の適用が急増し、これまでに60人以上が裁判にかけられており、その大半は軍事裁判所によるものだ。また不敬罪が適用される範囲の解釈も広がっており、昨年12月には国王の飼い犬について皮肉を投稿した男性が逮捕された。

 釈放された女性のうち1人は、政治集会での演説を理由に服役し5年以上がたっていた。不敬罪の場合、多くがそうであるように、この女性の場合も裁判中、保釈は認められず、11年に禁錮15年を言い渡された。この女性は軍政が敵視するタクシン・シナワット(Thaksin Shinawatra)元首相の熱心な支持者だった。

 またもう1人は、14年に風刺劇を上演して逮捕された若い女性で、禁錮2年6月を言い渡され、これまで2年4か月服役していた。3人目は国王の肖像画に対する「不適切な行動」を理由に昨年有罪となった高齢の女性。この女性は裁判で、精神疾患を患っていることが認められたが、その上で行動が「あまりに悪質」だったとされ禁錮刑が科された。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)アジア局長のブラッド・アダムス(Brad Adams)氏は「これらの人々は、平和的な表現を理由に罰せられて」おり、不敬罪にはタイのメディアや芸術、学問を「窒息」させる効果があると指摘し「クーデター以降、この法律の執行はいっそう恣意(しい)的で厳しいものになっている」と述べた。(c)AFP