■最後に笑うのは賭けの「胴元」

 欧州選手権2016が盛り上がるなか、ハノイの質店の前には、大きな試合の前に現金を用意するため、あるいは負けたカネを埋め合わせるために、スマートフォンやバイク、車、土地の権利証まで売りに来る人々が行列を成している。

 選手権が終わる頃までには、多くの人が破産するか、借金が払えず胴元やその子分から身を隠し続けることになるだろう。

 ベトナムのギャンブル依存症は、公務員から学生、プロのサッカー選手まであらゆる社会階層に広がっている。

 そしてここでも、最後に笑うのは賭けの胴元だ。

 フック(Phuc)さん(仮名、55)は、ハノイの宝石店オーナーという表の顔の裏で、違法賭博のブローカーとして客の賭け金の1%を手数料に取って稼いでいる。

 彼はAFPとのインタビューで、その犯罪組織網について語った。

 まず胴元たちが客からカネを集める。それをフックさんが受け取り、オンライン上で「大親分」たちに流す。彼によれば、大親分たちは香港(Hong Kong)や台湾の犯罪シンジケートに関係しているという。

 厳しく検閲されている国営メディアでは近年、ギャンブルを合法化すべきではないかとの議論が行われている。そうなれば、政府に巨額の税収が入ってくることが見込まれる。

 警察が取り締まりを強化しても無駄だとフックさんは言う。「そこには常に需要があり、その欲求を満たすための供給が生まれるからだ」と、にやりと笑った。(c)AFP/Tran Thi Minh Ha