■「チャイニーズ・ドリーム」

 広州恒大はスペインのトップクラブであるレアル・マドリード(Real Madrid)と提携し、世界最大とされるサッカーアカデミーを創設した。2000人以上の生徒がプロを夢見て毎日何時間も練習に励んでいる。

 W杯トロフィーの巨大なレプリカを掲げた同校は、中国を五輪競技の強国へと導いた、同国の「スポーツ猛特訓マシン」としての側面を反映している。

 だが、北京(Beijing)のスポーツアナリスト、マーク・ドレイヤー(Mark Dreyer)氏は、「他のスポーツで優勢を勝ち取るために中国が最大限に用いてきたこのやり方は、サッカーには通用しない」と苦言を呈する。

「子どもの意思に反して強制しても、問題は何ら解決しない」とする同氏は、「草の根システムの全面的な見直し」と、選手育成に向けた「ピラミッド型の構造」が必要だと指摘する。

 中国国家発展改革委員会は先月、2050年までにサッカーで世界をリードしていくための計画を発表した。この中で同委員会は、今後4年間でサッカースクール2万校を開校し、同国のサッカー人口を5000万人以上に引き上げるとし、また小中学生だけで同3000万人を目指すとしている。

 しかし専門家らは、同国には「高考(Gaokao)」と呼ばれる重圧のかかる大学受験をはじめ、若者の広い層にサッカー熱を広げていくことを困難にする文化的な問題があると指摘している。

 同国の教育制度のせいで「スポーツをする余裕も時間もほとんどない」と、米ミシガン大学(University of Michigan)のメアリー・ギャラガー(Mary Gallagher)氏は言う。「親は、高考で点が下がるリスクを負ってまで、毎日サッカーに興じる機会を与えるだろうか?」

 中国メディアの社説や記事では、サッカーにおける「草の根」改革が叫ばれているが、今のところ、まだその芽はほとんど出ていない。

 しかし、NPOドリームズ・カム・トゥルーで自慢のボールさばきを披露していた少年の母親は、同団体のゆったりしたアプローチのおかげで、サッカーに対する息子の情熱が養われていると語る。

「テレビも見ないし、漫画も読まない。考えているのはサッカーのことばかり」「プレーの腕を上げるのが彼の夢で、私たちの夢です」──そして、一呼吸置いた後に「これぞチャイニーズ・ドリームですよ」と笑ってみせた。(c)AFP/Ben Dooley