【3月31日 AFP】ナイジェリア北東部の辺境部にある町で2014年11月、イスラム過激派組織「ボコ・ハラム(Boko Haram)」が数百人の子どもたちを拉致する事件が起きたものの、事件に関する情報を当局が無視していたことが分かった。地元住民が30日、AFPの取材に明らかにした。住民らは政府の反応を恐れ、声を上げられなかったという。

 取材に応じたダマサク(Damasak)町の当局者や首長、長老、住民の証言は全員、2014年11月24日に少年少女300人と女性を含む500人が同町で拉致されたと語った。これは同年4月に北東部チボク(Chibok)地区でボコ・ハラムに集団拉致された女子生徒276人を上回る数だ。

 だが、昨年3月、当時のグッドラック・ジョナサン(Goodluck Jonathan)政権はダマサクでの拉致事件の情報を否定。また地元上院議員や情報当局高官も、この情報を疑問視していた。

 匿名で取材に応じた地元当局者の男性は、自分の7歳の子どもも拉致されたが、「私たちは、政府の怒りを招くのを恐れ、拉致事件について沈黙を続けた。政府はチボクの女子生徒拉致事件で面目をつぶされ、手いっぱいだった」「親たちは全員、怖くて声を上げられなかった」と語った。

 脱走できた地元住民たちがナイジェリア上下両院の議員らに伝えたが、「彼らは黙殺し、私たちを無視した」という。「政府はこのニュースを広めたくなかったのだ」。男性は、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)が今月29日に事件に関する報告書を発表したことで、初めて声を上げることを決めたと説明した。

 同じく匿名で取材に応じた地元首長は「彼ら(ボコ・ハラム)は私立学校やイスラム神学校から、最年少で5歳の子どもたちを連れ去った」「町にも入ってきて、母親から子どもたちを力ずくで奪った。5~16歳だった私のおい16人も拉致された」と語った。

 首長によると、数百人がダマサクと隣国ニジェールのディファ(Diffa)を隔てる川を渡って逃げたが、多数が溺れ死んだ。後に現場に戻り、「200人以上の遺体」を集団墓地に埋めたという。ダマサクの長老もまた、市日に起きた最初の攻撃で200人以上が殺害されたと話している。

 複数の目撃者の証言をもとにまとめられたHRWの報告書によると、人質になった人々は当初、小学校で拘束されていた。学校は後に、軍事基地となったとされる。男性らは別の場所で拘束され、路上に散乱した遺体を川に遺棄したり、地面に埋めたりする作業を強要された。数百人の遺体を見たとの証言もある。

 3月9日にダマサクを解放したチャドとニジェールの軍隊は、町のはずれの橋の下にある集団墓地で約100人の遺体を発見していた。中には、斬首されたり、撃たれた痕跡のある遺体もあった。(c)AFP/Aminu ABUBAKAR