■今では「有用な人材」?

 増加する一途の抗議行動に対し、中国共産党は多額の予算を投じ、反体制派に対する監視活動を拡大し、「黒監獄」という通称で知られる超法規的施設を設置するなど「安定を維持」するための措置で対抗してきた。

 2000年に黄氏は、中国で初めてネット上での活動を理由に拘束された「サイバー反体制活動家」として懲役5年を言い渡され、投獄された。さらに09年には、前年に四川(Sichuan)省で8万7000人が犠牲となった大地震に関し、倒壊した学校の設計に不備があったと報じたことで、3年の懲役刑を受け再び投獄された。投獄中にはしばしば暴行を受けたという。

 だが現在、習政権の下で黒監獄の使用が徐々に一般的でなくなり、抗議行動で拘束された者たちは労働矯正施設に送られるよりも、社会秩序の侵害を理由に拘留されるようになったと黄氏は指摘。「弾圧は今も存在するが、少なくとも合法的だ」という。

 当局の規制により「六四天網」を国内で閲覧することはできないが、それでも黄氏はようやく安心感を覚えるようになったと話す。

 黄氏は通常、政府上層部の批判や、運動の中で数多くの活動家が投獄されている急進的な政治改革の要求を避けている。一方で、習政権の反腐敗運動は汚職を防止する制度改革を欠いているにもかかわらず、これを称賛している。たとえ制度改革を欠いていても、役人の腐敗に激怒している一般市民の間でこの政策は疑いなく人気があり、共産党の内部監視機関も市民からの告発を奨励している。

「政府の最上層部は、もはや私のことを脅威とみなしていない。それどころか、有用な存在だと考えている。なぜならば、彼らが知らない多くの事例を暴露しているからだ。私に情報を提供してくれる人々の約3分の1は、地元の役人が投獄されさえすれば、報酬金など要らないと言っている。習氏が今している仕事は彼らのためだ」(c)AFP