黄氏は現在、中国南西部の都市、成都(Chengdu)の閑静な一画にあるアパートに居を構える。黄氏の電話やノートパソコンには、全国各地の都市や村々に張り巡らされたネットワークからひっきりなしに情報が寄せられ、受信を知らせる呼び出し音が鳴りやまない。

 黄氏は電話をかけてきた通信員に向かって「抗議しているのは何人?写真は撮った?」と声を張り上げる一方、身柄を拘束された警察で昼食として出された餃子の写真を送信してきた女性とネット上でチャットをしていた。

■強制土地収用、抗議行動をニュースに

 先頃開催された全国人民代表大会(National People's Congress、全人代、国会に相当)で李克強(Li Keqiang)首相は、土地改革の下で「当局は地方部の人々の利益を確実に保護する必要がある」と述べた。にもかかわらず、土地を喪失した人々の数は「一貫して増加している」と黄氏は指摘する。

 黄氏が「六四天網」を立ち上げた1997年、地方政府は魅力的な予算収入源として、時には農家を暴力的に追い出してまで、土地開発のために農地を売却し、役人たちは開発業者から見返りを得て財産を築く不正が横行した。世界の貧困層の土地所有権を擁護する米国のNPO、ランデサ(Landesa)が2012年に行った調査によると、土地収用の過程で5分の1の農民たちが補償を受けられず、受けられたとしても多くの場合は、当局が受け取るさして多くない額のさらに一部が支払われるだけだったという。

 その結果、地方部では、デモによる道路封鎖や役所に押しかけるといった抗議行動が爆発的に増加。現在では毎年数万件発生しているとされ、その多くが黄氏のウェブサイトにニュースを提供している。