【12月21日 AFP】顧客情報の守秘をビジネス基盤としてきたスイスの銀行業界が、国際的な圧力の中、新たな市場として中国に活路を見いだそうとしている。

「スイスの金融センターが注目している国の一つが中国だ。スイスを人民元の国際的な取引拠点にしたい」。スイス銀行家協会(Swiss Bankers Association)のクロードアラン・マルゲリッシュ(Claude-Alain Margelisch)最高経営責任者(CEO)は12月初め、ジュネーブ(Geneva)で記者団にこう語った。

 何世代にもわたって、世界中の投資家はスイスの銀行に高額の手数料を支払い、資産を各国の税務当局の目から隠してきた。だが、金融危機をきっかけに規制強化を求める声が強まり、先行きに不安が漂い始めた銀行側もいやいやながら、方針転換を受け入れざるを得なくなった。

 スイスは2017年、これまで貫いてきた秘密保持をやめ、他国との銀行口座情報の交換制度に応じる方針だ。

 米ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)によると、スイスが保有するオフショア資産は2013年時点で2兆3000億ドル(約270兆円)で、これは世界全体の26%に上る。

 だが、スイスの金融業界団体「ジュネーブ金融センター(Geneva Financial Center)」トップのニコラ・ピクテ(Nicolas Pictet)氏は10月、ジュネーブは「高速道路上のハリネズミのような振る舞い」をやめて目覚めなければ、世界各地の金融センターに顧客を奪われる恐れがあると警鐘を鳴らした。

 そして今、中国がその答えになり得ると多くの人が考えている。

 スイス銀行家協会のマルゲリッシュCEOは、2013年に中国とスイスが署名した自由貿易協定(FTA)が今年、発効したことに触れ、両国の関係はこれまでになく強いものになったと強調した。両国の当局者は昨年2度にわたり金融問題について会合。今年6月にはスイス国内の銀行が初めて金融円卓会合を開き、7月にはスイス国立銀行(Swiss National Bank、中央銀行)と中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)が二国間通貨スワップ協定を結んだ。

 次なるステップは中国の銀行がスイスに支店を開設することだと、マルゲリッシュCEOは述べた。(c)AFP/Marie-Noëlle BLESSIG