【11月21日 AFP】国際サッカー連盟(FIFA)は20日、2018年と2022年のW杯開催地決定の投票過程で不正があったとされる疑惑について、元米国検事のマイケル・ガルシア(Michael Garcia)氏が作成した報告書を倫理委員会の外部に公開し、精査すると発表した。

 この日、18か月に及ぶ調査を主導したガルシア氏と、ハンスヨアヒム・エカート(Hans-Joachim Eckert)氏というFIFA倫理委員会のトップ2人がスイス・チューリヒ(Zurich)で会合を行い、今回の決定を下した。2人は報告書をどこまで公開するかで、以前から意見が分かれていた。

 FIFAの監査・規定順守委員会が、報告書の完全版を精査する。そしてFIFA理事会に伝える情報を選定し、意思決定機関である理事会がそれを受けて今後の方針を決定する。

 エカート氏は先週、2018年ロシア大会と2022年カタール大会の招致活動について、ガルシア氏の調査では再投票が必要になるほどの証拠は提示されなかったと発表していた。

 しかしガルシア氏がその後、エカート氏は調査結果を正確に伝えていないと反論し、エカート氏の行動に対して不服申し立てを行うと宣言していた。

 そのほかにもFIFA上層部は、調査報告書を全面公開するよう、各所から圧力を受けている。

 ガルシア氏とエカート氏は共同声明を発表し、「理事会が今後の方針を決定するには、倫理委員会の調査結果に基づいた情報が必要である。その点の重要性について、2人の意見が一致した」と述べた。

「そこで監査・規定順守委員会が、そのために必要なことを行う」

 さらに両者は、監査・規定順守委員会から質問があれば、どんな内容でも答える用意があると述べている。また、声明ではガルシア氏の調査に基づいてFIFAがすでに何件か訴えを起こしていること、今回の精査がその訴えに何ら影響を及ぼさないことも明記されている。

 FIFAはこれとは別に声明を発表し、ガルシア氏とエカート氏の判断に感謝すると同時に、監査・規定順守委員会は「独立」していることを強調した。

 カタール大会については、2010年の開催地決定投票が終わった直後から不正があったとの批判にさらされているが、カタール側はやましいことは一つもないとこれを強く否定している。

 先週には、エカート氏がガルシア氏の報告書の概要を公開し、再投票は行わないと声明を発表していたが、それから数時間後、ガルシア氏が概要に異議を唱えるつもりだと話し、問題は新たな局面を迎えていた。

 米連邦検事の経歴を持つガルシア氏は、報告書では詳細に記されていたはずの事実と結論について、概要では「著しく不完全かつ不正確な表現が無数にみられる」と主張している。

 ガルシア氏の報告書では、75人以上の人物の証言のほか、20万ページに及ぶ関係書類、聞き取り調査の結果が350ページにまとめられている。

 2大会の疑惑については、FIFAが「不正行為の可能性がある」として複数の人間を刑事告訴したことで、さらに状況が複雑化していた。(c)AFP