【11月22日 AFP】マレーシア南部ジョホールバル(Johor Baru)の市街地に描かれ、当局によってすぐに消されてしまったあるグラフィティ(落書き)が、同国の犯罪事情をうまく表現しているとして話題を呼んでいる──。もうこの世には存在しない作品なのだが、新たな派生作品も次々と出現しており、オリジナルを製作した男性と英国の著名グラフィティ・アーティスト、バンクシー(Banksy)とを比較する声すら上がっている。

 先週、ジョホールバル(Johor Baru)の街角に現れたこのグラフィティは、歩く女性とその女性を曲がり角でナイフを手に待ち受ける黒い服の強盗などがモチーフとなっていた。全てのキャラクターは、レゴ(Lego)人形風に描かれていた。

 このグラフィティを描いたのは、リトアニア人アーティスト、アーネスト・ザカレビック(Ernest Zacharevic)さん(27)。昨年近郊にオープンしたレゴランドに関連付け、町で頻発する犯罪をテーマに描いたのだという。

 ザカレビックさんの行為に怒り心頭となった市当局は作品をすぐに塗りつぶしたが、犯罪に対して不安を抱く周辺住民からは共感する声が上がった。さらにネット上では、似たようなイメージを捉えた画像が溢れ、消されてしまった作品のコピーや別の作家による絵がジョホールバルをはじめ、首都クアラルンプール(Kuala Lumpur)など国内各所に出現した。

 ソーシャルメディアのフェイスブック(Facebook)では、ザカレビックさんの作品を取り上げたページに約1万6000の「いいね!」が寄せられた他、レゴ人形風のキャラクターをモチーフにしたTシャツを20リンギット(約630円)で販売するページが出現するなど、盛り上がりをみせている。

 同国北部のペナン(Penang)州在住と伝えられているザカレビックさんは21日、「これほど反響を呼んだことは今までなかった。うれしいよ」と地元紙「スター(Star)」に語った。

 先週のAFPの取材では、「犯罪が人々の日常生活に影響を及ぼしており、周囲には恐怖感が漂っている。(人々が)この問題について話し合えるようになることが重要だと考えた」とコメントしている。

 マレーシアでは近年、反社会的勢力同士の抗争に伴う発砲事件が頻発しており、治安の悪化を訴える声が多く聞かれるという。(c)AFP