【10月30日 AFP】北朝鮮の人権問題を調査している国連人権理事会(UN Human Rights Council)の特別委員会のマイケル・カービー(Michael Kirby)委員長は29日、国連本部で行った中間報告後の記者会見で、脱北者を対象にした聞き取り調査の内容に涙を流さざるを得なかったと述べた。

 カービー委員長は、逃亡先の中国でひどい扱いを受けた後に北朝鮮に送還される女性らの扱いが、特に非情であったとした。

 国連人権理事会の特別委員会は、これまでにロンドン(London)、東京、ソウル(Seoul)での聞き取り調査を行っており、30日からは米首都ワシントン(Washington D.C.)での調査を開始する。

 これまでの調査では、北朝鮮内の強制労働施設での状況に加え、拉致された日本人の親族らや、1950~53年の朝鮮戦争によって離散した家族らへの聞き取りを行った。

 国連本部での報告を終え記者団会見に臨んだカービー委員長は、「証言のいくつかは、非常に悲惨なものだった」と述べ、オーストラリアで判事として35年間にわたりさまざまな悲惨な事件を目の当たりにしてきたが、「証言の多くに涙を流さずにはいられなかった」と続けた。

 カービー委員長は、北朝鮮からの脱出を試みた女性たちによる証言について触れ、「その多くは、逃亡先の中国で強制結婚や人身売買などの人権侵害にさらされる」とした。またソニア・ビセルコ(Sonja Biserko)委員も、中国当局によって北朝鮮に強制送還された女性らは収容所で「最悪の扱いを受けている」と述べた。

 一方の北朝鮮は、特別委員会の調査を「挑発的」として非難しており、こうした証言は真実ではないと主張している。

 しかしカービー委員長は、強制労働施設での状況について「多数の証拠」を集めたと明言。こうした施設では、収容者の親族との理由だけで、多くの人々が食料を十分に与えられない状態で収容されているとした。

 また「証言の真偽を確かめる方法の一つに、国境の開放がある」とし、調査のための代表者を派遣するよう北朝鮮側に求めたという。

 委員会は、来年3月の国連人権理事会で最終報告書を提出する予定だという。

 カービー委員長は、聞き取り調査によって集めた証言が、「(多くの人に)見られるべき」とし、また全ての国連組織による「追跡調査の対象となるべきだ」と続けた。全証言はウェブサイト上で公開されている。(c)AFP