【7月8日 AFP】スウェーデンのカロリンスカ大学病院(Karolinska University Hospital)は7日、人工骨格を患者自身の幹細胞で覆った人工気管を移植する世界初の手術に前月成功したと発表した。

 患者は末期の気管がんの36歳の男性。移植手術は6月9日に行われ、同大学病院のパオロ・マッチアリーニ(Paolo Macciarini)教授率いる国際外科チームが執刀した。人工気管は、執刀チームに参加するロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)のアレクサンダー・セイファリアン(Alexander Seifalian)教授が開発した。

 カロリンスカ大学病院は声明で、術後の状態について「患者自身の幹細胞から作った組織なので、移植に対する拒否反応は出ていない。免疫抑制薬も使用していない。現在、患者は完全に回復しつつあり、8日にも退院する予定だ」と説明した。

 執刀チームによると、この患者のがん細胞は、放射線治療の効果がなく器官全体をふさぐほどまで肥大していたが、適切なドナーが見つからなかったため、最後の選択肢として人工器官の移植術を行ったという。

 チームは「幹細胞から再生した組織と人工骨格でできた気管を使った再生医療措置が気管移植の標準になれば、患者に適合するドナー臓器を待つ必要がなくなり」、気管移植手術の分野に革命を起こし得ると期待を示している。中でも、成人に比べて適合するドナー臓器の入手が難しい子どもの患者にとって、恩恵が大きいという。

 マッチアリーニ教授は過去に2回、肝細胞から再生した組織を使った気管の移植手術を行っているが、これまでは人口気管ではなく、ドナーから提供された気管に患者の肝細胞を移植していた。(c)AFP

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