【3月25日 AFP】カップ1杯で100ドル(約8000円)もの高値が付くインドネシアの世界最高級コーヒー、「コピ・ルアク(ルアックコーヒー)」の人気が急激に高まっている。

「ルアックの王」を自称するグナワン・スプリヤディさんは、飼育するジャコウネコが糞(ふん)とともに排泄するコーヒー豆の出荷が需要に間に合わず苦労している。

「ルアック」とは現地語でジャコウネコのこと。外見がイタチに似たこのジャコウネコの糞から取り出されるコーヒー豆を焙煎するルアックコーヒーは、世界の食通の間で珍重されている。

■3年で出荷量が24倍に

 スマトラ(Sumatra)島のランプン州はルアックコーヒーの最大生産地だ。西ランプン(West Lampung)地区にあるスプリヤディさんの農場では、約40匹のジャコウネコを飼育し、自家製ブランドの「ラジャ・ルアク(ルアックの王様)」に使用するコーヒー豆の「腸内工場」となっている。

「近いうちにジャコウネコは150匹に増やしたい。需要の増加に応えたいんだ」とスプリヤディさんは語る。2008年に50キロだった出荷量は、09年には300キロ、10年には1.2トンに急増したという。

「金の糞」たるルアックのコーヒー豆は、米国やオーストラリア、日本、韓国、シンガポールなどに輸出され、1キロあたり800ドル(約6万5000円)の高値を付ける。コーヒー店まで行けばいっそう値は張り、ロンドンの専門店ではカップ1杯100ドル(約8000円)もする「世界で最も高級なコーヒー」だ。

■良い実を選定、おいしい化学変化も

 このコーヒー豆が生産される過程でジャコウネコが果たす役割は2つある。

 まず、ジャコウネコはコーヒー豆を食べる際、よく熟した消化しやすい実を選ぶ。専門家によると、実を見分ける能力が最も高いのは野生のジャコウネコだが、かれらの糞を「収穫」するのも最も難しい。

 次に、ジャコウネコは実を食べる時に固い外殻をかじりとるので、ジャコウネコの消化液が豆に浸み込み、豆に含まれる物質が微妙な化学変化を起こす。スマトラ島のコーヒー品種は通常アラビカ種だが、この微妙な変化を経た豆を糞から取り出し、洗って軽く焙煎すると、コーヒーの苦みが消え、柔らかな独特のフレーバーが醸し出される。

 スプリヤディさんは「車で言えば、ルアックコーヒーはロールスロイスだ」と胸を張る。

 ルアックコーヒーの歴史は、インドネシアがオランダの植民地だった数百年前にまで遡る。植民者たちにコーヒー豆を採ることを禁じられた地元の農民たちが、森に住むジャコウネコの糞の中にコーヒー豆が消化されずに残っているのを見つけ、これを集めて荒い、焙煎したのが始まりだった。(c)AFP/Alvin Darlanika Soedarjo

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