【3月21日 AFP】巨大地震に津波、原子力発電所の事故――日本を次々と襲った災厄は、世界各地の巨大都市がいかに災害に対して脆弱(ぜいじゃく)かを浮き彫りにした。都市リスクの専門家たちに話を聞いた。

 今回の東北地方太平洋沖地震では、人口3500万人を抱える東京都市圏の大半は大きな被害を免れた。東京電力福島第1原発の放射性物質の脅威も、国際原子力機関(IAEA)によれば少なくとも現時点では東京に到達する恐れはない。

 しかし、仮に1923年の関東大震災のように、直下型の大地震が東京を襲ったとしたらどうなるだろうか。あるいは、津波が東京湾で発生したとしたら? 200キロ南の浜岡原発で事故が発生し、風向きが首都圏にとって最悪だった場合は?

「今回の災害は、巨大都市が物理的、社会的、経済的、環境的なあらゆる面で脆弱だという事実を明らかにした」と、国際大都市地震防災機構(Earthquakes and Megacities InitiativeEMI)のフォアド・ベンドミラッド(Fouad Bendimerad)会長は指摘する。「巨大都市の災害弾力性に関するこれまでの想定の多くは、問い直されることになるだろう」

■原発の危険性を再認識

 自然災害がもたらす脅威の連鎖に直面している巨大都市は、東京だけではない。

 米ロサンゼルス(Los Angeles)危機管理局のクリス・イプセン(Chris Ipsen)局長にとって、日本の被災は大都市における最悪の事態を想起させるものだった。「ロサンゼルスも例外ではない。地震多発地域で、津波の脅威もある。だが、今回新たな脅威として、放射線が加わった。ここにも複数の原発がある」

 ロサンゼルス南部には1970年代に建造された原発があり、その80キロ圏内に800万人が生活している。しかしイプセン局長によると、原発事故がもたらしかねない混乱については、検討されていない部分が多い。前年7月、ロサンゼルス当局は市内で放射能汚染爆弾(いわゆるダーティーボム)が爆発したという想定で緊急時対応のシミュレーションを行ったが、「すぐに想定シナリオに圧倒されてしまった」(イプセン局長)という。

 米東岸では、ニューヨークからわずか55キロの距離に40年前に建造されたインディアンポイント(Indian Point)原発があり、ニューヨーク(New York)州のアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)知事が前週、閉鎖を呼びかけている。

■困難な課題:巨大都市からの住民避難

 危機管理当局が最も頭を抱えるのは、災害でインフラが機能しない中で、いかにして巨大都市に暮らす数百万の住民を避難させるかという点だ。

「巨大都市からの避難における最大の問題は、輸送機関や移動経路、渋滞、エネルギー供給停止などだ」と、国連国際防災戦略(UNISDR)のヘレナ・モリン・バルデス(Helena Molin Valdes)事務局次長は語る。

 また、ドイツ・ボン(Bonn)の国連大学研究所で脆弱性評価や危機管理を研究するヨルン・ビルクマン(Jorn Birkmann)氏は、東京近郊の人口の5分の1が65歳以上であることを指摘し、「3500万人を短時間で避難させるのは、不可能でないとしても、ほぼ現実的でない」と述べる。

 一方、大量の住民を避難させることは決して実行不可能ではないと指摘する専門家もいる。地震リスクに関して日本トップクラスの専門家で、東京都の防災分野で委員を務める東京大学(University of Tokyo)の加藤孝明(Takaaki Kato)准教授は、「最も重要な要素は市民が普段通りに行動し、状況を冷静に理解することだ」と語った。

 今回AFPが取材した全ての専門家が、災害時に文化的要素が大きく影響することに同意し、日本国民の災害への心構えは世界のどの社会と比べても高い、と指摘した。

 しかしビルクマン氏は、現在日本を襲っている事態について「地震、津波、主要インフラを襲った問題など、トラブルの連鎖は人びとの対応能力を超えてしまったのではないか」と示唆している。(c)AFP