【12月15日 AFP】南仏リビエラ(Riviera)地方のリゾート地、カンヌ(Cannes)で前週開かれた富裕層向け旅行博「インターナショナル・ラグジュアリー・トラベル・マーケット(International Luxury Travel MarketILTM)」で、米フェースブック(Facebook)やマイクロブログサービス「ツイッター(Twitter)」などオンライン上のソーシャル・メディアが、富裕層向け旅行業界にとって主要な宣伝ツールとなっている様子が明らかになった。

 業界の大物が一同に会したカンファレスでは、旅行情報雑誌コンデナスト・トラベラー(Conde Nast Traveler)の編集者から、「6億人のユーザーがいるフェースブックなどのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)が旅行選びに与える影響力」について報告が行われた。トレンドに関する発言が注目される米社交界の著名インテリアデザイナーは、旅行サイトのカスタマーレビューは「本当に参考になる」と語った。

 米国では、旅行慣れしていてSNSも使いこなすベビーブーマー第一波が来年65歳を迎えることから、ウェブサイト情報を活用する傾向は今後ますます強まるだろうと、プリファードホテルグループ(Preferred Hotel Group)のリンゼイ・ユベロス(Lindsey Ueberroth)社長は予測する。

■ベビーブーマーの1割がSNSを活用

 同ホテルグループの調査によると、米国のベビーブーマー人口7700万人のうち1割弱の約650万人がすでにSNSを積極的に利用している。最富裕層は個人の旅行アドバイザーに頼ることが多いが、ウェブ上で何時間もかけて旅行情報を探し、また予約もウェブ上ですると答えた回答者が百万人単位に上った。調査では、健康であると同時に財力もある活発なベビーブーマー世代が65歳に達し、この世代の旅行熱は高まると分析している。

 世界22か国に旅行アドバイザー6000人以上を抱えるラグジュアリー旅行最大の業界団体「バーチュオーソ(Virtuoso)」のマシュー・アップチャーチ(Matthew Upchurch)CEOは、インターネットはプロの旅行アドバイザーにとって脅威となるどころか恩恵だととらえている。「フェースブックでは1200人の”友人”をもっているが、旅行先や宿泊地について本当に興味のもてる情報が得られると、ボタンひとつで”共有”でき、みんなの役に立つ」

 高級ホテルやリゾートも顧客開拓や評判維持にオンラインの活用を進めている。フェースブックやツイッターで新企画を宣伝したり、顧客との対話を絶やさないようにしているホテルも多い。
 
■専属担当者がウェブ上のイメージを管理

 コンラッド(Conrad)系列の最上級ホテル、ウォルドルフ・アストリア(Conrad and Waldorf Astoria)のシニア・エグゼクティブ、オリバー・シャビー(Olivier Chavy)氏によると現在、大半の高級ホテルがソーシャル・メディア専門のマネジャーを置き、ウェブ上のイメージコントロールに努めている。また宿泊予約の約6割がインターネット予約を通じたものとなっている。つまり人気のある旅行サイトでひとつでも評価の悪いレビューを書き込まれれば、長年かけて築き上げてきた評判も崩れかねない。

 旅行業界は依然、旅行会社やツアーオペレーターが中心を仕切っているが、ウェブサイトやSNSが市場にどれほどの影響を与えるかはまだ定かではない。

 2011年末のオープンを控えるカンボジアのプライベート・アイランド・リゾート、Song Saaの創業者ローリー・ハンター(Rory Hunter)氏はAFPの取材に対し、オンライン・メディアと非オンライン・メディアを織り交ぜた宣伝を行うと語った。「オンラインは戦略上、重要な部分のひとつだが、ツアー・オペレーターや旅行会社も活用します」(c)AFP/Audrey Stuart