【1月25日 AFP】英国が禁輸措置を発表し、米軍が「使い物にならない」と断じた爆弾探知機が、イラクでは現在も使用されており、この探知機に対する信頼と疑念の両方の声があがっている。

 バグダッド(Baghdad)市内の混雑する道路で、イラク陸軍中尉は、AFP記者に対し「使い物にならないことも禁輸措置になったことも知っているが、ここでは使い続けている」と語った。「デタラメな装置だよ。しかし、われわれはうそをつき続けているのさ」

 この爆弾探知機「ADE651」、通称「魔法のつえ」は、銃把のような部品の先に回転式のアンテナが取り付けられた形状で、数種類の紙のカードを交換して装着することで、C4やTNTなどの爆発物やそのほかの武器などを探知することができるとされている。

 製造元は英ATSCで、1台あたり1万6500~6万ドル(約150万~540万円)で販売された。イラクの地元治安部隊などが大量購入したため、イラク国内ではあらゆる場所で見かけることができる。

 しかし、英警察は前週、ATSCのジム・マコーミック(Jim McCormick)社長(53)を不実表示の容疑で逮捕した。また、ADE651が爆弾物探知に適していないとの検証結果が出たことを受けて、英政府は同製品を禁輸措置にした。ADE651はこれまでに、香水から金属製の歯の詰め物まで、さまざまな物体を爆弾と誤探知している。

 イラクのAFP記者によると、24日現在、ADE651はバグダッドを始め北部のモスル(Mosul)や南部のバスラ(Basra)で使用されているところが目撃されている。

■「何でも探知」に賛成の声も

 一方、イラクの警察官、Rayad Mehdi氏は、「とても役に立っている」と述べてADE651を支持する。Mehdi氏が担当する検問所は、バグダッド中心街Salhiyah地区の混雑した場所にある。前年10月25日に2件の連続自爆攻撃が起きた法務省庁舎とバグダッド市行政庁舎から、わずか数百メートルの距離だ。

 Mehdi氏は1年以上ADE651を使用してきた。「車の捜索に役立つ。油圧オイルからCDまで、何でも検知するのさ」と評価する。

 ADE651は正式な軍需品ではなく、禁輸措置はアフガニスタンとイラクのみ。同措置は、「英軍と友軍に危険を及ぼす可能性」があるためだという。また、在バグダッド英国大使館も、ADE651への懸念をイラク当局に伝えている。

 イラク政府は、同探知機について正式なコメントを発表していない。(c)AFP/Arthur MacMillan

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