【12月23日 AFP】ブリジット・バルドー(Brigitte Bardot)を輩出し、トップレスの日光浴姿を世界に知らしめたフランスが、今度は尻に対する人類の飽くなき興味について明らかにした。

 大きかったり小さかったり、引き締まっていたり垂れていたりするが、人間には誰にでも尻がある。しかし太古の昔から、人の創造性を刺激するもの、官能的な欲望、タブー、そして権力を嘲るVサインなど、尻に対してさまざまな認識がある。

 そして今、フランスのジャーナリスト2人が、尻がそのような意味を持つ理由、そして今以上に尻はたたえられるべきだとする理由を突き止めるために立ち上がった。「The Hidden Side of the Bottom(お尻の隠された側面)」の著者アラン・ロスチャイルド(Allan Rothschild)氏とカロリーヌ・ポション(Caroline Pochon)氏だ。ロスチャイルド氏は、「もっと尻に関心を持てば、もっと尻を愛でれば、そしてもっと尻の絵を描けば、世界は今よりも良くなるだろう」と語る。

 尻を愛でても世界平和の原動力にはならないと言えるのかもしれないが、2人によれば、「控えめな」尻はひどい待遇を受けており、もっと関心を持たれるべきだという。

■尻について熱く語るドキュメンタリー  

 共著のほかにも2人は、科学者、精神分析医、作家、芸術家らが尻について語るドキュメンタリー番組にも参加している。古代ギリシャの彫刻から映画のきわどい表現、ポスター、歌曲、詩、絵画まで、人類の歴史で尻はさまざまに表現されてきたが、この番組ではその背景について議論する。「尻に対する興味は万国共通。尻に対する欲望は、さまざまな時代と文化の中で具体化されてきた」とポション氏。  

 芸術からスパンキング、生理学から同性愛者のポルノまで、尻は研究対象にもなりビジネスにもなる。  ある美術史家は、尻を控えめに描いたギュスターヴ・クールベ(Gustave Courbet)の絵画をルーベンス(Rubens)の均整の取れた女性の絵画と比較した。一方で、フランスのある社会科学者は、尻を引き締める筋肉は人体で最も強い筋肉のひとつで人類の歩行を支えていると説く。

 また、このドキュメンタリー番組では、いわゆるホッテントット・ビーナス(Hottentot Venus)と呼ばれた大きな尻の女性についても言及している。この女性は1800年代初め南ア・ケープタウン(Cape Town)で奴隷として働いていたが、英国そしてフランスへと連れてこられた。女性はその大きな尻が異常だとして見せ物にされ、市民がその姿に飽きると、科学者は特定の人種が劣っているという論理の証明に利用した。

■尻に対する執着は男女共通

 ポション氏とロスチャイルド氏は当初、女性の尻に対する執着だけを研究しようとした。しかしすぐに、男性側にも強さともろさを組み合わせた、尻に対する多くの関心があることが分かった。 ロスチャイルド氏によれば、男性の尻は「かわいらしくもあり、ときに筋肉質でときに少し垂れている」らしく、「守り、明らかにし、また関心を持つに値する尻」だという。

 そこで2人は、美術史家グザビエ・ジラール(Xavier Girard)氏が官能的で哲学的な激しさを最大限に表現しているというミケランジェロ(Michelangelo)の作品から、21世紀の同性愛者の文化まで、男性の尻のさまざまな表現を研究した。

■尻を見せるのは政治的抵抗  

 また、尻を見せることは権力に対する抵抗として使われてきた。ポション氏は、「尻を見せるのはとても政治的なジェスチャーだ」と語り、抗議行動でズボンを下ろしている人を度々見かけると指摘した。

 歴史的な根拠は乏しいかもしれない。しかし、メル・ギブソン(Mel Gibson)主演の映画『ブレイブハート(Braveheart)』のクライマックスで、スコットランドの兵士がイングランド軍に対しキルトを上げて尻を見せるシーンが描かれている。

 パリの形態学者フィリップ・コマール(Philippe Comar)氏によれば、女性がコルセットを使い締め付けたウエストラインで尻をこれまで以上に強調するようになったのは19世紀になってからで、このころは史上最も性差別的で女性嫌いの時代だったという。「フェミニズムがそのころ誕生したのは、当然のことだ」と同氏は語った。(c)AFP/Jean-Francois Guyot/Jurgen Hecker