【4月29日 AFP】米大統領選の民主党候補指名を争うバラク・オバマ(Barack Obama)上院議員が通うシカゴ(Chicago)の教会にかつて在籍し、過激な発言で物議を醸したジェレミア・ライト(Jeremiah Wright)牧師が28日、ワシントンD.C.(Washington D.C.)のナショナル・プレス・クラブ(National Press Club)で自身の発言をめぐる批判に対して反論した。オバマ氏の選挙活動に対する影響は大きく、この問題が再び候補者指名争いの争点になりそうだ。

 ライト牧師は2001年に行った説教で、9.11の同時多発テロは米国の攻撃的な外交政策が原因だとしたり、米政府の黒人に対する仕打ちを非難したりしており、この映像が最近になって米メディアで繰り返し放送され、大きな反響を呼んでいた。

 ライト牧師は数週間にわたり、発言に対する批判を「黒人教会に対する攻撃」と呼び、発言は前後の文脈を無視しているとして、反論を続けてきた。オバマ氏は、ライト牧師と距離を置くことで批判をかわそうとしたが、指名争いでオバマ氏の優位が明らかになるにつれ、この話題が蒸し返される形となっている。

 オバマ氏側近のデービッド・アクセルロッド(David Axelrod)氏は、ライト牧師の映像が何時間もニュース番組などで放送されると、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)上院議員との指名争いに悪影響が出る可能性を認めている。

 オバマ氏は27日、米FOXニュース(Fox News)とのインタビューで、あらためてライト牧師の発言と一線を画した上で、「人種問題が大統領選の障害になるとは思わない」と語り、指名獲得における懸念を振り払おうと躍起だった。

 だが、米クイニピアック大学(Quinnipiac University)の世論調査機関のアナリスト、クレイ・リチャーズ(Clay Richards)氏は「人種問題は、間違いなく労働者層の白人有権者にとっての関心事項だ。黒人大統領候補への投票に抵抗を持つ年配の白人有権者もいる」と指摘し、人種問題が大統領選に大きな影響を与えつつあると語る。

 米ニューズウィーク(Newsweek)誌が28日に発表した世論調査でも、41%の人がライト牧師の問題をめぐってオバマ氏への評価を下げた。

 ナショナル・プレス・クラブで約200人を前に行ったスピーチで、ライト牧師は発言に対する批判について「これはジェレミア・ライト本人への攻撃ではない。オバマ上院議員にも関係がない。アフリカ系米国人が経験してきたことについて何も知らない者が行っている、黒人教会に対する攻撃だ」と語った。
 
 また、「イエスは『人にしてもらいたいと思うことはなんでも、あなたがたも人にしなさい』と語った。テロリズムを行わなければ、自分たちに返ってくることもない」と語り、米国の攻撃的な外交政策が最終的には米国人の不利益になると強調した。

 共和党の指名獲得を確実にしているジョン・マケイン(John McCain)上院議員は27日、ライト牧師の一連の発言について「米国人がこの種の発言に接したとき、なぜ怒りと動揺を禁じえないかは理解できる」と語った。(c)AFP