【1月8日 AFP】中国の製薬業界において現在、バイオ技術分野はあくまで2番手だ。また、前年7月に当局者が収賄罪により死刑執行されたことをきっかけに、医薬品ライセンスの大規模見直しが実施されるという暗雲もたれ込めている。

 だが専門家によれば、遺伝子組み換え薬品・ワクチンの製造企業は急成長を遂げており、世界にその舞台を広げつつあるという。

 カナダ・トロント(Toronto)にあるMcLaughlin-Rotman Centre for Global Healthのピーター・シンガー(Peter Singer)氏は、7日の科学誌ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)に中国のバイオ技術分野に関する研究を発表。「(中国バイオ技術分野が)すでに確立されていることは疑いのない事実だ。驚くべきは、確立してまだ10年であるにもかかわらず、市場に革新的な製品を送り出している点だ」と指摘する。

 シンガー氏率いる研究チームは、数あるバイオ技術企業の中から科学的にもビジネス的にも革新的な中小企業22社を選び、調査を実施した。その結果、バイオ技術分野が過去10年にわたり30%の成長率を達成し、2005年には国内で30億ドル(約3300億円)規模の市場に成長していたことが分かった。

 その一方で、活動が限られた一部の大企業に独占されているのも事実で、健全性には常に疑念がつきまとっている。

 中国バイオ技術分野はまた、10年20年の経験を欧米で積んだ中国出身の科学者が、政府からの潤沢な資金援助を受けて研究を主導する世界でもある。

 その一例が遺伝子治療用製剤「Gendicine」だ。Gendicineは、臨床試験を経て世界で初めて承認された遺伝子治療用製剤で、頭部や首の腫瘍に直接注射される。これまでに400人の外国人を含む5000人以上の患者が、放射線治療と併用して利用した。製造元は2005年に中国国家食品薬品監督管理局(State Food and Drug AdministrationSFDA)の承認を受けて間もなく、利益を上げるようになった。

 しかしSFDAの承認も、十全なものとは言えなかったようだ。鄭篠萸(Zheng Xiaoyu)前局長が前年7月、わいろを受け取った見返りに適切な調査をせずに医薬品に承認を与えていた罪で死刑執行されたことを受け、現在、同局発行の17万件のライセンスが見直されているのである。

 とはいえ、国内で開発される治療法やワクチンの大半が物議を醸すことは非常に少ない。実際、バイオ技術分野で製造される90%以上の製品はバイオジェネリック医薬品で、純粋な新薬は全体の3-5%に過ぎないからだ。(c)AFP