【12月25日 AFP】経済成長が続く中国とインドのエネルギー獲得をめぐる競争は2008年にはさらに過熱する見通しだ。両国は世界各地でエネルギー争奪戦を繰り広げているが現時点では中国が大きくリードしていると専門家は口をそろえる。

 資金力があり積極的な外交を展開する中国は、長期的なエネルギー資源の獲得においてアジア、アフリカ、中南米など世界各地で、官僚的で動きが鈍いインドを圧倒している。英軍事週刊誌ジェーン・ディフェンス・ウィークリー(Jane's Defence Weekly)のインド・アナリストRahul Bedi氏は「インドもペースを速めているが、ミャンマーでもスーダンでもインドネシアでも、中国はインドのずっと先を行っている」と話す。例えばミャンマーでは中国は、今月韓国の大宇インターナショナル(Daewoo International)が開発したミャンマーの天然ガス田の供給権を獲得した。中国はパイプライン建設に11億ドル(約1255億円)を投資する。

■石油需要を高める経済成長

 シンガポールに拠点を置く石油コンサルティング会社Purvin and GertzのVictor Shum氏は「中国は目標に向かって他の国よりもはるかに攻撃的かつスピーディーに行動する」と指摘する。その理由は肥料から携帯電話まで生産する中国の巨大な産業にある。「多くの輸出用製品を生産する中国はエネルギーを必要としている」と北京(Beijing)のエネルギーコンサルティング会社Anbound ConsultingのアナリストHe Jun氏は語る。「これは止めることのできない動きだ」

 国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)によると、石油需要の半分近くを輸入に依存している中国は2006年、1日当たり716万バレルの石油を消費した。今後も石油消費は拡大し、2010年頃に米国を超えると予測されている。インドのエネルギー需要も急増しているが、中国に比べてサービス産業が盛んなことから原油消費量は中国を大きく下回っている。原油の70%を輸入しているインドは1日当たり245万バレルの原油を消費している。

■世界の石油価格にも影響

 中国の旺盛なエネルギー需要は、原油価格が1バレル100ドル近くまで高騰した原因の一翼を担っている。「2002年以降、中国の石油需要は年率5-10%の割合で増加しており、原油価格上昇の3分の1は中国に起因するものだ。一方、インドはむしろ(石油価格高騰の)被害者だ」とPlatts Asia Oil DirectorのDave Ernsberger氏は指摘する。

インドの民主的政治体制が、国営石油天然ガス公社(Oil and Natural Gas CorpONGC)によるエネルギー投資を中国企業に比べて難しくしているという事情もある。「インドの意思決定はやや時間がかかる。その点、計画経済の中国の動きは速い。議会に説明する責任がなく、ただ実行すればいいのだから」とBedi氏は語る。

 中国は中央アジアでのプレゼンスを強化しロシアの資源にも手を伸ばそうとしている。インドは、ロシアの複数の石油・天然ガス会社との契約が2月までにまとまると発表したが、インドと米国の関係が改善したことで、従来良好だったロシアとの関係が悪化するきざしもある。

 インドは最近、中国にならい資金拠出や貿易・防衛協力を通じてアフリカ諸国との連携を強めている。見返りとして、ONGCは2004年から採掘を実施しているリビア、アルジェリア、エジプトに加え、スーダン、ナイジェリアでの採掘権を獲得した。10月にはインドのマンモハン・シン(Manmohan Singh)首相が、同国首相としては45年ぶりに、アフリカの最大原油輸出国ナイジェリアを訪問した。しかし中国はすでに道路、鉄道、石油化学施設の建設を通じてアフリカで確固たる地位を確立している。2007年初めには胡錦濤(Hu Jintao)国家主席がここ3年で3回目となるアフリカ訪問を実現した。「中国は莫大な金額を投じ、政治、経済両面で実に積極的にアフリカに進出している。インドはそこまでの積極性を見せていない」とBedi氏は語る。(c)AFP