【11月22日 AFP】オーストラリア人口の6倍、もしくは日本の全人口プラス500万人に相当する人数が米国で買い物に出かけるといわれる「ブラックフライデー(Black Friday、黒字の金曜日)」が、今週末に迫った。23日の感謝祭翌日のこの日は、米国の店舗や小売業界にとって1年で最も多くの売り上げを見込める日で、クリスマス商戦も本格化する。

 1億3300万人と言えば非常に多く聞こえるが、全米小売業協会(National Retail FederationNRF)によると、これでも前年の1億4000万人より700万人少ないという。

 「ブラックフライデー」の名前は、この日の売り上げによって帳簿が黒字になることが由来とされる。しかし、米国内ではガソリン価格の高騰やサブプライムローン問題、史上最多の家屋差し押さえや金融引き締め策などの影響で、消費者の財布のひもも固くなり、今年はブラックフライデーが来ても業界は「ブルー」な気分を引きずりそうだ。加えて米連邦捜査局(FBI)には、クリスマスにテロリストが混雑したショッピングモールを狙うという未確認の情報も届いているという。

 消費者の経済的な不安やもろもろの心配事を忘れさせるため、小売店業界は豪華で斬新なイベントの企画に躍起になっている。

 国際ショッピングセンター協会(International Council of Shopping Centers)によると、「消費者の休日気分を盛り上げるために、各地のショッピングモールではサンタと一緒のペット記念撮影、学校や教会のコーラスグループによる賛美歌パフォーマンス、料理コンテスト、焼き菓子セールなどがめじろ押し」だという。

■経済が不安な時こそ、見逃せない目玉セールが

 ワシントンD.C.(Washington D.C.)近郊のショッピングモールでは消費者の購買意欲をかきたてるため、さまざまな人種のサンタや手話のできるサンタ、子ども向けパレード、人工の雪を使った屋内のクリスマス村までが登場する。

 ワシントンD.C.とボルティモア(Baltimore)の中間にある街コロンビア(Columbia)のショッピングモールでは前週、全米に3か所しかない、サンタと交流できる「サンタスティック」なクリスマス村がお披露目された。初日にはサンタを迎えるための子どもパレードが開催された。

 モールのKaren Geary店長はこのイベントについて、「家族の思い出を作るための企画。訪れる買い物客に最高の環境を提供するために、業界でこれまでにない試みをしたかった」と語った。見込み客を引き寄せるためのイベントかという質問にはコメントしなかったが、この日の客足が予想以上に良かったことは認めた。「反響は想像をはるかに超えた。100人ほどの子どもが来ればと期待していたが、実際にはその倍の子どもと親たちが来た」。

 イベントを見物したある母親はAFPの取材に対し「息子とクリスマス村を見に来ただけで、お金を使うために来たわけじゃない」と語った。3時間後、2人は数切れのピザを食べ、180ドルから60ドルに値下げされた商品を購入して帰って行った。

 NRFのTracy Mullin会長は「今年のホリデーシーズンは、顧客が値打ち品を求めていることを小売店業界は理解している。見逃せないバーゲン品やキャンペーンが多数登場するだろう」と声明で述べている。

 同協会は11月初め、クリスマスの買い物の出足が遅いことについて、業界から懸念の声があがっていることを明らかにした。しかし、クリスマスに向けた買い物を10%以上済ませた人はまだ、米国人の4分の1にも満たないことがわかり、同協会は「心配する必要はまったくない」との見解を示している。(c)AFP