【9月23日 AFP】安倍晋三(Shinzo Abe)首相(53)の辞意表明に伴い、23日に投開票された自民党総裁選挙に出馬した麻生太郎(Taro Aso)同党幹事長(67)は、独特のカリスマ性が功を奏すことなく福田康夫(Yasuo Fukuda)元官房長官(71)に敗れ、3回目の総裁選も逸した。

 麻生氏は、吉田茂(Shigeru Yoshida)元首相を母方の祖父に持ち、夫人は鈴木善幸(Zenko Suzuki)元首相の娘、実妹は寬仁親王妃とエリートの家系。

 一方、育ちに縛られないユニークな経歴で知られ、米国カリフォルニア(California)に留学後、生家の事業でアフリカ・シエラレオネに駐在、ダイヤモンド鉱山開発に携わった。1976年のモントリオール五輪ではクレー射撃の日本代表として出場するなど、その人生は多彩。射撃手としての「まっすぐに的を撃つ」姿勢を政治手法にも反映するかのように、自身の保守的な見地を率直に表明し、たびたび物議も醸してきた。

 夏の参院選では、安倍首相の代わりに麻生氏の応援演説を希望する候補者も多かったが、日本と中国のコメの価格差をめぐり「アルツハイマーの人でもわかる」と失言し、謝罪。過去にも、アジアの歴史問題をめぐる発言で近隣諸国の怒りを買ったり、「一文化、一文明、一民族、一言語の国は日本のほかにはない」と述べたりしたこともある。日本による朝鮮半島の植民支配時代に、家業のセメント企業が強制労働に関与していたとの批判も取りざたされてきた。

 麻生氏は過去2回、自民党総裁選に出馬し、安倍晋三(Shinzo Abe)首相、その前任の小泉純一郎(Junichiro Koizumi)元首相に敗れているが、自民党歴は長い。小泉政権、安倍政権では続けて約2年間、外相を務め、7月の参議院選挙での自民党大敗後は党の幹事長に抜てきされた。

 8月にマニラ(Manila)で開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大外相会議の夕食会では、ちょんまげを結った侍姿に仮装して登場。はやりの音楽に乗せたエクササイズダンスを披露して、参加者からの拍手喝さいを浴びるなど、親しみやすい側面も見せた。

 総裁選前には、自分が立候補しなければ総裁選自体が実施されなかっただろうと、出馬した意義を強調。また今回の総裁選は「古い自民党と新しい自民党の戦い」と位置づけた。23日に敗北が明らかになった際には、厳粛な顔つきの福田氏とは対照的に大きな笑顔を見せた。

 個性あるハスキーな声と皮肉めいた笑顔で、新しいタイプの「一匹オオカミ」とみなされることも多いが、近年は若者に人気のサブカルチャーにも精通する側面を披露し、外相時代には「国際漫画賞」を創設。「漫画を語らせ始めたら止まらない」と自他ともに漫画通ぶりを認める。

 しかし麻生氏にとっては不幸なことに、総裁選で投票したのは漫画ファンたちではなかった。(c)Shaun Tandon