【東京 11日 AFP】11日、中国の温家宝(Wen Jiabao)首相が中国の指導者として7年ぶりに来日した。歴史問題で関係が悪化したアジアの2大経済大国、日本と中国は、関係改善に向けた話し合いに取り組むこととなる。今回の訪日は、経済が相互依存を深める一方で、過去10年間に悪化した両国関係を緩和をしようとする日中双方の首脳の試みのなかで実現した。

■日中関係改善への試み

 安倍晋三首相は10日「私は温首相にとって今回の訪日が良い思い出となることを希望している」と延べ、「日中の『戦略的互恵関係』の構築に向けて、会談が実りあるものとなることを希望する」と、日本で日中間の緊張緩和を意味する際によく使われる表現を使って語った。

 温家宝首相は3日間の訪日のほとんどを、国会での演説、皇居でのスピーチ、日本の学生相手の野球に参加するなど、両国の友好関係をアピールするような予定となっている。

■経済関係

 温首相の到着に先立つ数時間前、日中間の最初の合意として日本産米の中国への輸出を4年ぶりに再開することが合意された。中国は世界最大のコメ消費国だが、国内需要は自国産米でまかなっている。国内の米農家を厚く保護している日本は、中国の富裕層に高級米を売り込むことを狙っていた。

 また、豊富な安い労働力と大きな中産階級の市場を求めて日本企業は相次いで中国市場に参入した。中国は2004年に米国を抜いて、日本の最大の貿易相手国となった。2005年には、日本が過去の侵略を償っていないとして、中国の複数の都市で激しい抗議行動が起こったが、そのような緊張関係をよそに、両国間の貿易は成長を続けている。
 
■環境問題

 政府当局者によれば、温首相は12日に安倍首相と会談し、日本が中国に温室効果ガス削減に関して援助することで合意する見通しだと語っている。中国は京都議定書(Kyoto Protocol)に参加しておらず、米国が同議定書に参加しない1つの理由となっている。日本は、中国の京都議定書後の地球温暖化防止の枠組みへの参加を働きかけると思われる。

 また、温首相と共に中国の大手石油会社首脳も来日しており、環境関連技術の共同開発についてのエネルギーフォーラムに出席するという。
 
 東京大学東洋文化研究所の田中明彦教授は、「中国は、日中関係が経済に悪影響を及ぼすほど悪化することを望んでいない」と話す。「中国の指導者層は、さらなる中国経済発展のために、日本が果たす役割の重要性を認識している。中国の経済発展には良好な国際環境が不可欠だ」とも話している。

 写真は同日、羽田空港に到着し、在日中国人の歓迎を受ける温家宝(Wen Jiabao)首相(右から2人目)。(c)AFP/Toru YAMANAKA