【ジャカルタ/インドネシア 4日 AFP】堅調な成長を続けるアジア経済。その裏では偏った経済成長に取り残された約5億人近くの市民が、いまもなおスラム街に乱立する出来合いの小屋で苦しい生活を送っている。米国に拠点を置く国際支援団体「ハビタット・フォー・ヒューマニティ(Habitat for Humanity)」は、適切な住居を供給する必要性をアジア各国に訴えた。

 ハビット・フォー・ヒューマニティは3日に発表した報告書で、「この先30年間で約11億5000万人が農村部から都市部へ流入し、早急に手を打たなければ住宅事情はさらに悪化する」とアジア各国に警鐘を鳴らしている。それらから波及する悪影響は経済や社会、政治にまで波及する恐れがあるという。

 「アジア太平洋地域はいま、農村部から都市部への人の大移動がみられる。低所得者用住宅の需要が高まっている。この需要が満たされるかどうか、そしてどのように満たされるかが、アジア各国の経済、社会、政治の動向に大きな意味をなす」のだという。

■ 経済成長は遂げるも、貧困も拡大をみせる

 国内総生産(GDP)成長率10.7%をマークした中国を筆頭に、力強い経済成長を見せるアジア各国は、外国人投資家の格好の投資先となっている。一方でアジアは世界のスラム街住民の6割、約5億5400万人を抱えている。この数字は東南アジア諸国連合(ASEAN)10か国の合計にほぼ等しい。

 スラム街に住む住民の多くはあり合わせの材料で建てた小屋で生活し、清潔な水や衛生施設などにも恵まれていないという。スラム街は過密化し、多くはゴミ捨て場付近や鉄道脇や洪水多発地域に形成されている。公衆衛生や教育の不足から、病気にもかかりやすくなるという。

 非営利団体ハビット・フォー・ヒューマニティは世界のキリスト教会系の住宅供給を活動目的とした団体で、世界に20万戸の住居を建てた実績があり、ジミー・カーター(Jimmy Carter)元米大統領も参加していることで知られる。同団体がまとめた報告書は「もっとも懸念すべきことは所得や富の不均衡が拡大していることである」と警告している。

 写真はジャカルタ(Jakarta)で3日、川で洗濯する女性。(c)AFP/ADEK BERRY