【パリ/フランス 29日 AFP】29日パリで、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第4次報告書作成のための作業部会が開かれ、世界各国から気象学者ら500人近くが参加する。報告書は3つの作業部会ごとにまとめられ、第1弾として来月2日、地球温暖化とそれに伴う気候変動に関する科学的な根拠が、6年ぶりに提示される。

 2001年の第3次報告書では、化石燃料による環境被害の危険性が指摘され、各国政府に衝撃を与えた。今回の報告書作成の関係者によると、楽観的になれる情報は1つもないといい、これまでで最も厳しい評価内容が予想される。

 仏気候学者のHerve Le Treut氏は、「これまで長い間言われていたことを裏付ける内容で、しかも更なる危険が指摘される」と述べた。

■ 気候変動はすでに始まっている

 気候変動は今後数十年のうちに始まるとされてきたが、ここ数年で多くの研究者が、すでに気候変動が始まっていると示唆してきた。たとえばアルプス地方では氷河が溶け出し、峰を覆う雪の範囲がどんどん小さくなっている。北極の夏期の氷の大きさも以前より相当小さくなり、永久凍土地帯も縮小している。大量の二酸化炭素を吸収した海水の酸性度が増したとの報告もある。

 IPCCは第3次報告書で、主に人間の活動により、過去50年間に地球上の気温が年に約0.1度のペースで上昇していると指摘。今後の温室効果ガスの放出量次第では、2100年までに地表の気温は1.4-5.8度、海面は0.09-0.88メートル上昇すると予測した。また、石油やガス、石炭といった化石燃料を燃やすことで排出される二酸化炭素の大気中の濃度が、42万年で最高値となったとした。

 今回、第4次報告書の作成にあたって、これらの数字がどのように修正されるかが注目される。

■ 京都議定書にもとずく努力も効果なし

 温暖化の速度は温室効果ガスの排出量にかかっているが、京都議定書に基づく各国政府の排出量抑制努力はなかなか効果が上がっていない。また気温上昇に伴い、永久凍土など地表に蓄積された二酸化炭素が空気中に放出され、温暖化が一気に加速するとの恐れも指摘されている。

 化石燃料は現代社会のエネルギー供給の基幹を成しており、二酸化炭素の排出削減はすなわち、クリーン・エネルギーへの転換にかかる経済負担を意味する。これに対し専門家らは、削減に取り組まなかった場合、干ばつや洪水、暴風雨が増加し、海面が上昇するなど、やがては人間の定住そのものまで脅かす潜在的なリスクがあり、長期的なコストがかかると指摘。

 世界銀行(World Bank)のニコラス・スターン(Nicholas Stern)博士は2006年、このまま何も対応がなされないならば、気候変動によってかかるコストは世界のGDPの20%近くに上る可能性があると報告している。

 残る2つの作業部会による報告書は、4月に発表される。それぞれ、気候変動の影響と、温室効果ガス削減にかかる社会的、経済的なコストがテーマになる予定だ。

 写真は、米航空宇宙局(NASA)提供による、月面から顔を出す地球。(2004年10月4日、アポロ11号から撮影)(c)AFP/NASA