【3月13日 AFP】アフガニスタン南部のカンダハル(Kandahar)州で11日に発生した米兵が民家を襲撃し16人を射殺した事件を受け、アフガニスタンで怒りの声が渦巻いている。同国議会は公開裁判の実施を求め、同国の旧支配勢力タリバン(Taliban)は報復を宣言した。
 
 この米兵は11日未明に基地を抜け出し、民家3軒を襲撃して女性と子供を含む16人を射殺した。米国防総省によると、容疑者は30代の陸軍軍曹で、イラクへ3度派遣された経験がある。アフガニスタンでの勤務は今回が初めてだったという。

 アフガニスタンのハミド・カルザイ(Hamid Karzai)大統領は射殺事件を「許されないことだ」とし、また同国議会は「残酷で非道」だと非難、「外国部隊の無関心さに国民の我慢は限界に達している」として、「われわれは米政府が犯人を処罰し、アフガニスタン国民の前で裁くことを強く要求する」とする声明を出した。

 だが米国防総省は米軍が同兵を訴追するとして、公開裁判の要求は拒否した。今回の事件は米軍にとって新たな衝撃となったものの、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領はアフガニスタンからの「早急な撤退」には慎重な姿勢を示し、現状のアフガニスタン戦略を継続する姿勢を示している。

 現在米国とアフガニスタンは、2014年に予定されている国際治安支援部隊(ISAF)の撤退後の両国関係を決める戦略協定の締結に向けて困難な協議を進めているが、今回の事件は両国に厳しい試練を与えた。

 米軍は2001年、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の最高指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者をかくまったタリバン政権を倒したが、タリバンが再びアフガニスタンを支配しないよう支援する目的で同国に残る可能性がある。米国とアフガニスタンの協定では、アフガニスタン国内での米軍の法的立場も扱われるだろう。

■米国防長官、死刑の可能性に言及

 レオン・パネッタ(Leon Panetta)米国防長官は12日、キルギスへ向かう飛行機の中で、事件を起こした米兵は軍法会議にかけられ、死刑になることもあり得るとの見方を示した。同長官は現時点で犯行の動機は不明だと述べた。(c)AFP