【3月22日 AFP】オランダのアマチュア無線家が、リビア上空の飛行禁止空域の設定に向けた多国籍軍の軍事作戦で米軍の特殊部隊の無線通信を傍受し、ウェブ上に音声などを公開した。

 安全保障問題専門のブログ「デンジャールーム(Danger Room)」によると、通信を傍受したのはかつてオランダ軍に所属していた「Huub」として知られる人物。

 Huub氏はリビアでの米軍と民間の無線通信を傍受することに成功し、通信内容をツイッター(Twitter)やウェブサイトに公開した。現在、Huub氏のツイッターは5000アカウント以上にフォローされている。

■コールサインは「スティール74」

 Huub氏のツイッターによると、軍の航空機と管制塔の間の暗号化されていない交信で、「PSYOPS実施中。USAF EC-130J、テールナンバー 00-1934、コールサイン『スティール74(STEEL 74)』。メッセージを短波でリビアに送信中」と述べていた。

 この暗号のような文章は、登録番号が00-1934でコールサイン(無線通信の呼出符号)が「スティール74」の米空軍輸送機ハーキュリーズ(Hercules)の派生型機「EC-130J」との意味になる。

■心理戦行う「特殊装備の航空機」

 同機は、リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の軍部隊に対する多国籍軍の作戦「オデッセイの夜明け(Odyssey Dawn)」の一環として、リビアに向けたメッセージを電波に乗せて届けている。

 この航空機は、米軍特殊部隊に所属し、心理戦やプロパガンダに活用される機体で、高い高度を飛行して敵軍や市民らの行動に影響を及ぼすようなメッセージを放送する。

 会見でこの機体の任務について質問された米国防総省高官は、多国籍軍が「特殊装備の航空機」を使用していることを認めた。

「その種の特殊機体を配備したが、現段階では(無線送信している)メッセージの内容を明かすことはできない」と、ビル・ゴートニー(Bill Gortney)海軍中将は記者団に語った。

■「港を出てはならない」とリビア船舶に忠告

 だが、Huub氏は発信されているメッセージの一部を録音し、インターネット上で公開した。

 内容は、多国籍軍が海洋封鎖を実施した後に、港を離れることを阻止させようとするもので、雑音の中で英語とフランス語、アラビア語で繰り返されていた。

「リビアの船舶や艦艇は港を出てはならない。カダフィ体制軍は、あなたの国の国内対立に終止符を打つための国連決議に違反している。もしあなたたちが港を出るようであれば、攻撃を受け、直ちに破壊されるだろう。安全のため、港を出てはならない」

 また、20日には米軍輸送機KC-10の通信を傍受。スペインのモロン(Moron)空軍基地に帰還する際、マルタの航空管制塔と交信していたという。

 Hubb氏はさらに、シチリア(Sicily)島のシゴネラ(Sigonella)基地に向かう米軍のF16戦闘機2機の通信や、ユーロファイター(Eurofighter)5機に空中給油した後フランスの空域から離脱する英国の空中給油機の通信も傍受した。(c)AFP/Mathieu Rabechault

【参考】多国籍軍の無線音声掲載サイト
【参考】無線内容を掲載するツイッター