【12月23日 AFP】米中央情報局(CIA)が米同時多発テロ独立調査委員会(9・11委員会)の調査に対し、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)関連の容疑者に対する尋問ビデオの存在を示さず調査を妨害したと、同委員会の元委員が語っていた。ニューヨークタイムズ(New York Times)紙が22日、報じた。

 これに先立ち、CIAがアルカイダのメンバー2人に対する厳しい尋問の様子を撮影した複数のビデオテープを2005年に破棄していたことが、CIA自身によって12月初めに明らかにされていた。

■ビデオの存在自体、知らされず

 その後、同時多発テロ独立調査委員会の元委員が当時の書類を再検証したところ、同委員会は2003年と04年にわたり繰り返しCIAに、アルカイダ・メンバーの尋問の詳細情報を求めていたが、ビデオの存在については一切知らされていなかったことが分かったという。

 今回の再調査について、独立調査委員会エグゼクティブ・ディレクターを務めたフィリップ・ゼリコー(Philip Zelikow)前国務省顧問がまとめた覚書は、CIAの行為が連邦法に違反するか否かを明らかにするために「さらなる調査」が必要としている。

 NYタイムズによると、覚書はビデオテープを提出しなかったことが違法だとは断言していないが、連邦調査に対し「故意に重要事実」を差し控えたり「隠匿」したいかなる者も、連邦法により罰せられると述べている。

 CIAによるアルカイダ関係者の尋問ビデオ破棄は、尋問における拷問的手法の隠匿を意図したものだったとの疑いにより、人権権団体や議員らからすでに非難を浴びているブッシュ政権にとって、今回の問題の発覚はさらなる圧力になるとみられるが、CIA側は「独立調査委員会から尋問ビデオに特定した要求はなかった」と反論している。

 独立調査委員会の共同委員長を務めた民主党のリー・ハミルトン(Lee Hamilton)元下院議員とトーマス・キーン(Thomas Kean)元ニュージャージー(New Jersey)州知事はNYタイムズに対し、今回の件の発覚は、CIAが委員会の調査妨害を積極的に行っていたことを示すものだと述べた。キーン氏はCIAの妨害は「明らか」だと言い、テープ破棄問題を調査中の連邦高官や議員に、覚書を提供すると述べている。

■CIAの回答は「不満足なものだった」

 NYタイムズのウェブサイト版に掲載されたゼリコー氏の覚書によると、2001年9月11日の米国同時多発テロの調査を行っていた独立調査委員会は、テロ攻撃に至る過程を再構成しようとするなかで、アルカイダのメンバーに対する尋問に関心を寄せた。委員会は当初、ビデオも含み尋問から得られる情報資料を全般的に要請した。

 その後、調査委員会は、尋問内容や容疑者の陳述の信頼性、翻訳の正確性などについて「非常に詳細な情報」を求めて、さらなる情報提供を要請した。しかし「これらの質問に対する(CIAの)回答に委員会は満足しなかった」と覚書は記している。また、委員会と接触を持ったCIA高官のうち、誰一人としてビデオテープの存在を明かした者はいなかったという。

 CIAのマーク・マンスフィールド(Mark Mansfield)報道官はAFPに対し、独立調査委員会の要求にCIAでは「労をいとわず」協力し、テロ容疑で拘束した人物らに対する尋問の詳細を委員らは提供されていたと主張した。CIAは公式声明でも「多大な支援を提供した」としている。「CIAは委員会が書類でもインタビューでも入手できるよう、100%協力した。委員会はテープだって要求できたはず。委員会の調査中はテープは破棄されていなかったのだから」

 さらにマンスフィールド報道官は、マイケル・ヘイデン(Michael Hayden)CIA長官の12月6日の声明を引用し、「テープが破棄されたのは情報価値がもはや無くなったと判断されたからだ」と述べ、内部や議会、司法当局のいかなる調査とも関係ないと強調した。(c)AFP