【8月19日 AFP】シリア政府による反体制デモへの武力弾圧が続く中、米国のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領や欧州のリーダーたちは18日、シリアのバッシャール・アサド(Bashar al-Assad)大統領に初めて明確に退陣要求を突き付け、新たな制裁を発動した。

 2004年以降、米政府はシリアを「テロ支援国家」だと非難し、数々の経済制裁を科してきた。しかし、これまでも約10年にわたり同様の制裁に持ちこたえてきたシリア政権は、今回も一向に動じる気配はなく、欧米の「謀略だ」と反発している。

■限られる米国の影響力

 反体制デモに対するシリア政府の弾圧開始から5か月が経ち、人権団体などの推計によると死者は約2000人に達している。

 しかし、欧米の退陣要求や制裁措置でアサド政権が揺るぐことはない、とレバノンにあるカーネギー中東センター(Carnegie Middle East Center)のシリア専門家、Lahcen Achy氏は語る。「米国はシリアから石油を買っていないし、米国との貿易はシリアの外国貿易全体の3~4%以下でしかない」ため、オバマ大統領のシリアへの影響力は限られているというのだ。

 経済ニュースレター「シリア・レポート(Syria Report)」の編集長Jihad Yazigi氏も「シリアが米国内に持つ国有資産は実質、ゼロ。石油輸出の95%は欧州向けだし、米国が何を言おうが、こけおどしにしかならない」と同調する。

 国連安保理では、反体制デモに対する弾圧が「人道に対する罪」にあたるとして、国際刑事裁判所(International Criminal CourtICC)にアサド政権の捜査を付託しようという動きがある中、シリア政府は常任理事国である同盟国、ロシアと中国にこの動きの封じ込めを託している。

■「内政干渉」への反発は反体制派からも

 そうした中、オバマ大統領や欧州からの退陣要求に対するシリア政府の反応は「内政干渉だ」という非難だった。

 シリア情報省のハダド報道官は「忘れてもらいたくない点は、シリアの大統領を選ぶのはシリア国民だけだということだ。欧州諸国やオバマ氏が、シリア政府の改革を支援するのではなく、さらに暴動をかきたてようというのは、おかしな話だ」と述べた。国営テレビも「外圧に対してシリア国民は立ち上がるということを、欧米諸国は忘れている」と援護射撃した。

 しかも、反体制側さえもが、欧米政府による決定に距離を置いている。英ロンドン(London)に本部を置く人権団体「シリア人権監視団(Syrian Observatory for Human Rights)」のラミ・アブデル・ラーマン(Rami Abdel Rahman)代表も「大統領の退陣を決めるのはシリア国民だ。路上で多くの血が流された事態を解決するには、真の民主化しかなく、それを達成するのはシリア国民であり、外国人に頼るものではない」と他国の干渉を拒絶する。

 反体制派のネットワーク「民主化のための全国調整委員会」に加わる人権派の弁護士、ハッサン・アブデル・アジム(Hassan Abdel Azim)氏はこう語る。「国民に対する政権の武力弾圧が、それを止めさせようとする地域社会や国際社会の介入を招いている。われわれはシリア当局に、外国に干渉させる道をつけないために、武力弾圧を止め、国民の要求に応えよと働きかけている」(c)AFP/Sammy Ketz

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