【8月15日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は13日、2001年9月11日の米同時多発テロで崩壊した世界貿易センター(World Trade Center)ビル跡地「グラウンド・ゼロ(Ground Zero)」近くにイスラム教のモスクを建設する計画を支持する意向を示した。これについて、同国では宗教の自由と、同時多発テロの被害者への配慮について、議論が巻き起こっている。

 オバマ大統領は、ホワイトハウスで開催されたイスラム教徒のラマダン(断食)明けの夕食会で、「この国の誰もが信教の自由を保障されている。ロウアーマンハッタン(Lower Manhattan)の私有地に、地元の法令を守りつつ礼拝所とコミュニティーセンターを建設することもこれに含まれる」と語った。

 大統領はこれまで沈黙を保ってきたが、3日にニューヨーク(New York)市の歴史的建造物委員会が建設を事実上認める決定を下したことを受け、それを支持する姿勢を見せた。

 オバマ大統領は「ここはアメリカだ。信仰の自由を揺るがせてはならない」と述べたうえで、同時多発テロが国民の心にトラウマを残したとし、被害者の感情に理解も示した。

■一部の遺族は反発

 同時多発テロの被害者親族による団体、「9/11 Families for a Safe & Strong America」は14日、大統領の発言に「衝撃を受けた」とコメントし、モスク建設は「アラーの名のもとにさらなる惨事を引き起こす、意図的な挑発行為だ」と非難している。

 一方、別の被害者団体「September Eleventh Families for Peaceful Tomorrows」は、5月にモスク建設を「強く支持する」姿勢を明らかにしている。

 今月行われたCNNテレビの調査によると、モスク建設に賛成するのは29%、反対は68%だった。

 ニューヨーク(New York)選出のピーター・キング(Peter King)下院議員(共和党)は、ムスリム・コミュニティーが「権利を乱用し、不必要に人びとを怒らせている」と指摘する。

「ムスリム・コミュニティーが、グラウンド・ゼロ近辺にモスクを建てるのは、無神経で心ない行為だ。そして残念なことに、大統領はポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)に屈してしまった」

(c)AFP/Carlos Hamann

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