【3月19日 AFP】22日に実施される台湾総統選挙で先頭を走る国民党(KuomintangKMT)の馬英九(Ma Ying-jeou)候補は18日、チベットで起こっている暴動に対する中国政府の武力弾圧を非難し、自分が当選した場合、北京五輪のボイコットも考えうると述べた。

 馬候補は今週末の選挙で総統に当選した場合、チベットの状況が悪くなれば、8月に行われる北京五輪への台湾人選手の出場を禁じることもできると述べた。また反中国暴動に対する中国政府による武力弾圧は「極度に威圧的でばかげている」と批判した。さらに同日朝、台湾は中国の一部であると再び主張した中国の温家宝(Wen Jiabao)首相について「傲慢だ」と非難した。

 終盤を迎えた選挙戦においてチベット暴動に焦点が集まる中、馬候補はこれまでと比較して異例に激しく、明確に発言した。中国との関係改善を訴え、和平協定に取り組むことを約束している馬氏は、ライバルである与党・民主進歩党(Democratic Progressive PartyDPP)の謝長廷(Frank Hsieh)候補から「親中国派の代理人でしかない」と批判されており、そうしたイメージを弱めるために今回の発言に至ったと専門家は分析する。

 報道陣に対し馬候補は「中国当局がチベットへの弾圧を続け、状況が悪化すれば、そしてわたしが次期中華民国総統に選ばれれば、2008年五輪のために北京に選手団を派遣することを見合わせる可能性も除外しない」と述べた。

 また同日早く、中国の温首相が「台湾の未来はすべての中国人民によって決定すべき」と述べた発言について、馬候補は台湾住民2300万人は「中国共産党の干渉ぬきで」自分たちで決断すると反論した。馬氏は「われわれは温家宝中国首相の、無慈悲で理不尽で、傲慢でばかげた自己正当化発言に強く抗議の声をあげる」と怒りをあらわにした。

 温首相は同じ声明の中で、台湾で総統選と同日に予定されている国民投票で国連(UN)加盟案が承認された場合、「(台湾)海峡、およびアジア地域一帯の平和を破壊することになるだろう」と警告を発していた。

 一方、馬氏の対抗馬であるDPPの謝候補は、チベットの状況をことさら取り上げ、中国と再統一した場合に台湾が何をこうむるかが示されていると主張している。台湾独立派であるDPPは主権問題を今回の総統選の主要争点にすえ、中国との共同市場による貿易強化を含めた馬氏の政策は、再統一を近づけることになると批判している。このため不況問題を争点としていた馬氏は、愛国者であると強調せざるをえなくなったようだ。(c)AFP/Benjamin Yeh