【ニューヨーク/米国 7日 AFP】ニューヨークで6日、エンパイアステートビルを足で駆け上がるというレース(Empire State Building Run-Up)が行われた。

 男子の部で優勝したドイツ人のThomas Doldさんは、「ずいぶん長い間、厳しい練習を積んできたんだ。信じられないよ」と語った。

 優勝タイムは10分25秒。2003年の勝者、オーストラリア人のPaul Crakeさんの記録に9.33秒及ばなかった。

■「つまずかない」「手すりの活用」が勝利の秘訣

 Doldさんによると、優勝の秘訣(ひけつ)は「最初から最後までつまずかないこと」。とくに、1階ロビーから狭い階段へと60人近くが殺到するスタートが肝心という。 「階段はとても狭いのに、誰もが一番に飛び込むことを狙っているんだよ」

 次に問題となるのは、5分前にスタートしている女子の部の最後尾に追いついた時だ。Doldさんは、10階付近で追いつき、そこから86階の展望台にあるゴールまで、レースのほとんどを女性たちを追い抜きながら走らなければならなかったという。

 女子の部で優勝したのは、オーストラリアから初挑戦したSuzy Walshamさんで、記録は13分12秒。男性に抜かれていくのは問題ではなかったが、「スタートは悪夢だった」と話す。大勢の参加者が階段に飛び込むのに有利な場所を確保しようと、ひじで押し合っていた。 「(優勝できたのは)たぶん、スタートでそんなに意地を張らなかったのが幸いしたんだと思うわ」

 そんなWalshamさんの作戦は、手すりをうまく使い、前を行く参加者が自分より遅ければ道を空けさせるというものだった。 「ほかの参加者たちをかき分けて行ったの。ある女の子が両側の手すりにつかまって上っていた時は、『追い抜きたいからつかむのは片方だけにして』って言ったわ」

■シンガポールの自宅マンションでトレーニング

 Walshamさんは陸上の1500メートル走の元選手で、今はシンガポールの会社で経理を担当している。参加前のトレーニングについては最初、「別にこれといって何もしなかった」と述べたが、最後には12階建ての自宅マンションで、連続8回の駆け上がり訓練をしたことを認めた。

 ただ、12階まで駆け上がってエレベーターで1階まで降り、また駆け上がるという繰り返しは、実際にエンパイアステートビルを駆け上がるのとは少し違うとWalshamさん。「途中で休憩が取れるでしょう」と話した。

 作戦上は、参加者のほぼ全員が「1段抜かし」を選択した。「でなきゃ自滅するね」とDoldさん。

 一方、オレゴン(Oregon)州から来た60歳のSteve Cackleyさんはスタート前に、より冷静な意見を述べていた。 「もう無理だ、というところまでは1段抜かしでがんばるつもりだ」

■最高齢は77歳のニューヨーカー

 最高齢の参加者は、地元ニューヨークの77歳、Al Pumaさんで、27分16秒で194位だった。 「わしの年代は、ほとんどがソファに納まってテレビばかり見ている。外に出て何かをすべきだよ」と主張する。

 Pumaさんの同イベントへの参加は、今回で15回目。体力維持の秘策は特になく、「自転車にたくさん乗ったり、ジムに通ったり。気候が暖かい時期は泳いだり。誰もがすることしかしとらんよ」と語る。

 今年のタイムは初参加の時から11分落ち。 「実のところ、こいつに参加するにはそろそろ年を取り過ぎてきたんじゃが」と「そろそろ」を強調しつつ、来年も絶対に参加すると宣言した。

 もっとも、参加者の史上最高齢は、2005年が最後の参加となったシチリア出身のピアニスト、Chico Scimoneさんの93歳だ。15年連続で出場したScimoneさんは、レースの1か月後に亡くなった。

 Pumaさんの最高齢記録更新までの道のりは、まだまだ長い。

 写真は同日、1階ロビーから先頭で階段に飛び込む男子の部優勝のDoldさん(右)。(c)AFP/Stan HONDA