【2月25日 AFP】人生を「半分しか入ってないコップ」と考えるか「半分もいっぱいになったコップ」と考えるか――プラス思考が、ホルモン分泌に関係する単一の遺伝子に起因するとの論文が、25日の「英国王立協会紀要(生命科学版、Proceedings of The Royal Society B)」に掲載された。

 論文を執筆した英国の科学者らによると、生まれつき幸福になりやすい人がいる一方で、遺伝的に憂うつになりやすい人がいるという。

■長い遺伝子、短い遺伝子

 これまでの研究で、「5-HTTLPR」と呼ばれる遺伝子が、脳内での神経伝達物質「セロトニン(serotonin)」の働きに大きな役割を果たしていることが知られていた。セロトニンは気分に密接に関連しているとされる神経伝達物質で、坑うつ薬にはセロトニンの分泌量を正常化する薬もある。

 また、これまでに科学者らは、遺伝子に3つの種類があることを突き止めていた。そのうちの2つは「短い遺伝子」などと呼ばれているもので、抑うつや自殺などの危険性の上昇に関連があるとされている。

 この2つの「短い遺伝子」が、第3の「長い遺伝子」と異なり、高ストレス状況で過度の神経化学反応を示すこともすでに分かっていた。

■苦痛と快楽の実験

 イレーヌ・フォックス(Elaine Fox)氏率いる英エセックス大学(University of Essex)の研究チームは、これらの異なるタイプの遺伝子を持つ人びとが、苦痛を感じる状況と楽しい状況とのどちらに、よりひきつけられ、あるいは、より嫌悪感を抱くかを調べた。

 調査の結果、長い「5-HTTLPR」遺伝子を持つグループの人びとは、恐怖感を与える図像やストレスを与える図像に対して著しい回避行動をとり、エロティックな図像や楽しい図像を注視したという。

 一方、短い遺伝子のグループは、長いグループほど顕著ではなかったものの、正反対の反応を示した。

■プラス思考で人生を乗り切る

 論文は、「人生のプラスの側面をみようとする遺伝子の傾向が、人生のさまざまな苦痛から回復する上で主要な認知機構となっていることを示唆している」と結論づけている。

 研究チームは、これまでの研究が示唆してきたことと同様に、この「防御傾向」を持っていない人は気分障害や不安にさらされやすいだろうとまとめた。(c)AFP