【6月26日 AFP】米国医師会(American Medical AssociationAMA)倫理委員会は25日に発表した報告書の中で、医療情報を記録した小型ICタグを患者の皮下に埋め込むことにより、「治療の安全性と効率性」の向上が図れるとする指針を採択した。

■治療の継続性向上が望めるタグ

 ICタグは米粒ほどの大きさで、慢性病の患者の皮下に注射針で埋め込む。緊急治療に当たる医師が医療記録を簡単に参照できるようにして、患者の本人確認と医療情報の安全利用に役立てる狙いがある。

 ICタグは主に、米小売大手のウォルマート(Wal-Mart)など、企業が商品輸送高速化の目的で使っている。信号がバーコードよりもスキャンしやすいという利点がある。

 報告書は、ICタグを人体に埋め込めば「治療の継続性と一貫性が向上し、結果として、薬品使用による副作用などの医療ミスが削減できる」としている。

■患者のプライバシーは守れるか

 その一方で、「ある種の身体的リスク、あるいは患者のプライバシー侵害などの社会的問題を引き起こす可能性もある」と指摘。監視目的でこの装置が利用されるなど、個人の自由が侵害される事態も起こり得ると警鐘を鳴らしている。

 米食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)が現在、人体への埋め込みを認めているのは、いったん埋め込むと情報更新できず、機能と通信距離も限られた「受動」タグのみ。患者のプライバシーを守るため、記録できる情報は個人識別コードに限られる。将来的には、バッテリー内蔵で、患者の状況の変化に応じて情報更新できる「能動」タグが認可される可能性もある。

■すべてが明らかではない人体への影響

 埋め込んだタグは取り出すことも可能で、体内で動かないようになってはいるが、サイズが小さいためほかの部位に動いてしまう可能性もある。さらに、自動体外除細動器(Automated External DefibrillatorAED)などの電子機器に干渉する可能性もあり、処方薬への影響も明らかになっていない。

 AMAの報告書は、「医療目的でのICタグ利用は拡大が予想される」としながらも、ICタグの埋め込みに当たっては患者への十分な説明と同意が必要で、医師の監督の下で利用することが望ましいと勧告している。(c)AFP