【5月27日 AFP】アフリカ東部および南部で数百万年前に発生した火山噴火と地殻プレートのずれによって形成された岩だらけの地形が、われわれ人類の祖先が二足歩行を始めるきっかけとなった可能性があるとの研究論文が24日、英考古学専門誌アンティクィテイ(Antiquity)に発表された。

 英ヨーク大学(University of York)の研究者らが発表した今回の研究は、広義のヒト科に属する初期人類が、暮らしていた森の木の数が気候変動で減少したためにやむを得ず二足で地上を歩行するようになったとする通説に異を唱えている。

 新しい仮説によると、進化を説明するのは、彼らが「なぜ森を離れたか」ではなく「どこに向かったか」なのだという。

 論文の共著者の1人、同大学考古学科のイザベル・ワインダー(Isabelle Winder)氏は「二足歩行が、気候変動による植生の変化への対応ではなくて、地形への対応として発達した可能性があることをわれわれの研究は示している」と話した。

■岩場は絶好の避難場所

 600万年前から200万年前の間、人類の祖先はアフリカにのみ生息しており、主に東部と南部に集中していた。この地域では当時、地殻変動活動が数多く発生した。

 研究チームは、数百万年にわたる地質学的変化と初期人類の骨格の進化を比較して、樹上生活をしていた初期人類は、通説となっている平らな平原ではなくて、起伏の多い岩場や峡谷に引き付けられた可能性が高いとの結論を下した。

 こうした地形は、捕食動物から逃れる避難場所になり、物陰に身を潜めやすかったのだろう。また岩だらけの地形は、より直立した状態でよじ登りながら歩く必要があったため、二足歩行を始めるきっかけになったのだという。

 初期人類はこうして、体重の大部分を脚で支えるようになり、手を岩の上で体を安定させたり、体を引き上げたりするのに使うようになったのだろう。結果として、ものをつかむ能力が向上し、最終的に道具を作り始めるまでの飛躍的な進化を可能にしたのだろう。

 ワインダー氏は「変化に富んだ地形は、認知能力やコミュニケーション能力が向上する要因となった可能性もある」と述べている。

 同氏によると、初期人類が木から地上に移動したときに、アフリカの多くの捕食動物からどのようにして逃れて生き延びたかという疑問は、数十年間も科学者らの頭を悩ませてきたが、今回の発見によってその答えが出るという。

 つまり、初期人類が次のすみかとした起伏の多い地形のおかげで、たやすく身を隠すことができたのだ。平らな地面への移動がようやく始まったのは、それから数百万年後だったのだろうとワインダー氏は述べている。(c)AFP