【9月18日 AFP】「地球の属する銀河には、暗黒物質(ダークマター)が円盤状に充満している」。この新たな仮説から、謎に満ちた暗黒物質の直接観測が実現する可能性もあるという。

 暗黒物質の存在は75年前に学説として登場したが、最近になってようやく間接的証拠でのみ存在が発見された。宇宙空間の質量の22%をこの暗黒物質が占め、同様に謎に包まれた「暗黒エネルギー」が74%を占めていると考えられている。残りのわずか4%が目に見える物質だ。

 これまでの主流学説は、暗黒物質はハローの塊のように天の川銀河を取り巻いているというものだった。

 しかし、英国王立天文学会(Royal Astronomical SocietyRAS)の国際専門家チームが16日に発表した論文は、これまでの学説で考慮されていたのは暗黒物質の重力的影響のみで、星やガスなどほかの物質の引力は考慮されていなかったとし、より広範な要因を考慮すれば、薄く円盤状に広がった暗黒物質が、銀河全体に存在していると予測されると主張した。

 研究主任でスイス・チューリヒ大学(University of Zurich)のジャスティン・リード(Justin Read)氏によると、円盤状に広がった暗黒物質の密度は、天の川銀河のハローにあたる密度の約半分しかなく、そのためこれまで発見されなかったが、密度が低くても円盤状に存在するならば、暗黒物質の発見が大きく期待できるという。

 暗黒物質の存在はこれまで、遠く離れた惑星や銀河からの光に影響する引力を通じて間接的に推測されてきたが、直接的な確証を得られない点が問題だった。

 一つの説として、暗黒物質は粒子から構成されているという説がある。暗黒物質の候補とされているのが「Weakly Interacting Massive ParticleWIMP、相互作用が弱く質量のある粒子)」と呼ばれるものだ。WIMPやその他の暗黒物質候補は、これまでゲルマニウムやキセノンなどの異物質を置く方法で幾度か観測が試みられたものの、発見に至っていない。これは、星間に存在するWIMPに探知用の物質が衝突すれば、閃光が発せられるだろうという推測だったが、今回の研究で観測できる可能性も出てきた。

 地球や太陽は天の川銀河の中心に対してほぼ円軌道を描き、秒速約220キロで公転しているが、ハローは地球から見た場合、動かないと考えられており、そのためあたかも暗黒物質の「風」が地球に向かって猛烈な速さで吹いているようになるという。

 これに対し円盤状の暗黒物質はハローよりも動きが遅く、地球と同時に回転するため、地球に衝突したときはいっそう速度が遅くなる。動きの遅い暗黒物質は、早いものよりも光を発しやすい。

 現在の探知方法では、背景の「ノイズ」と動きの遅い暗黒物質を区別することは不可能だが、次世代の方法が登場すればそれも可能となると予測される。

 この仮説が正しければ「非常に近い将来」、暗黒物質が直接検出される可能性もあるという。(c)AFP