【11月28日 AFP】南アフリカ・ダーバン(Durban)で28日開幕する国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第17回締約国会議(COP17)で、京都議定書に代わる温暖化対策の国際的な枠組みをめぐる協議の行方はどうなるのか? 専門家たちの予想はさまざまだが、大きな進展を見ずに終わるだろうとの点では大方、一致している。

 前年、メキシコ・カンクン(Cancun)での第16回締約国会議(COP16)で設定された気温上昇を2度に抑えるという目標を達成するには、早急に二酸化炭素(CO2)排出量を削減する必要があるという警告は、各方面の科学者たちから上がっている。しかし、2009年の第15回締約国会議(COP15、デンマーク・コペンハーゲンで開催)で決裂寸前まで深まった先進国と発展途上国との対立の影響はいまだ強く、COP17では低い目標設定が予測されている。

■「京都議定書後」めぐり割れる主張

 米科学者団体「憂慮する科学者連盟(Union of Concerned ScientistsUCS)」のアルデン・メイヤー(Alden Meyer)氏は、COP17について「3つのシナリオ」を予想する。どのシナリオでも鍵となるのは、世界で唯一拘束力のある温暖化削減目標である京都議定書の後をどうするかだ。先進国の温室効果ガス排出量を1990年レベルから5年間で最低5%削減することを定めた京都議定書は、2012年末に期限を迎える。

 京都議定書で温室効果ガス削減義務を免除されている発展途上国は、議定書の更新を求めている。しかし、日本やロシアを含む他の多くの参加国は、策定過程で大きな役割を果たした米国が批准せず離脱した京都議定書の延長はしないと拒絶してきた。

 京都議定書が先進国として削減義務を課した各国は、90年時点では世界の全排出量の64%を占めていたが、現在の排出量は3分の1を下回っている。

 一方で、京都議定書では削減義務を課されていないものの今や最大の排出国となった中国は、独自の削減目標を設定して国際的な枠組みを拒否しており、インドやブラジルもこれに続いている。

 全世界合計の11%しか排出していない欧州連合(EU)のみが唯一、国際的な枠組みに再度取り組む用意があるが、全ての排出大国が参加する法的拘束力のある国際条約を2015年をめどに締結することを条件としている。

■COP17、「3つのシナリオ」

 以下は専門家たちが予測する3つのシナリオだ。

1. 最善のシナリオ

 米中が「ロードマップ」を承認することを条件に、京都議定書で削減を義務付けられている先進国グループがEU主導で新たな削減目標の設定を担う。また、COP16で合意された途上国の温暖化対策を支援する1000億ドル(約7.8兆円)の「グリーン気候基金(Green Climate Fund)」も協議の前進を見る。

2. 中間のシナリオ

 来年に大統領選を控えた米オバマ政権が、京都議定書後の包括的な国際条約への参加は困難と判断して拒否するため、議定書延長をうたうことはできずに終わる。ただし、グリーン気候基金の立ち上げに向けては進展があり、温室効果ガス削減を監視・検証する新たなルールに沿った森林保護や技術移転、調整などの手法が具体的に詰められる。

3.  最悪のシナリオ

 UCSのメイヤー氏は「最悪の場合、京都議定書の『消滅』に対する怒りと発展途上国のリーダーシップ不足があいまって、COP16での合意事項すらも行き詰まってしまう。国連によるプロセス自体に疑問が生じる危機的モードに戻ってしまう」と警告している。

 ここに述べた「最善のシナリオ」でさえも、あまりに目標が低すぎ、あまりに遅過ぎるととらえる国もあるだろうが、それよりも健全な結果を生むチャンスはほとんどないか、ゼロに近いというのが専門家の見方だ。(c)AFP/Marlowe Hood