【10月13日 AFP】温暖化が進行すると、熱帯の動植物種がより標高の高い場所へ移動を余儀なくされ、低地にある熱帯雨林は不毛の地となるという予測を、今週発行の米科学誌「サイエンス(Science)」が掲載した。

■大半の生息圏の標高差はわずか600メートル

 熱帯における地球温暖化の影響に関して研究したのは、米コネティカット大学(University of Connecticut)の生態学者ロバート・コルウェル(Robert Colwell)氏らのチーム。

 同チームは、南米コスタリカのある火山で、森林に覆われた山ろくから頂上方向へ向かい、2000種の植物、昆虫を採取した。

 9日に発表された論文要約によると、これらの生物の種の半数が、標高差600メートル程度の狭い範囲で生息しており、標高があがると生息環境がまったく変わることが明らかになった。

 また熱帯の山腹にある森林は人間によって「著しく分割」されてしまっているため、多くの種にとっては連続的な移動で生息域を変えていくことも、まったくできない状況となっている。

 すると、地球上で最も温暖な生息域である熱帯低地雨林では、動植物が「出て行く」一方で置き換わる生物がいないという状態が生まれかねない。また、標高の高い場所へ移動できない動植物は、温度上昇に適応できなければ、絶滅の危機に直面する。

 要約ではリスクの評価にはさらに調査が必要としているが、熱帯雨林とその山間部に住む種に対し、温暖化の影響は甚大だと警告している。

■90年前よりも高い場所に「引っ越した」小動物たちの調査も

「サイエンス」誌の同号別の記事では、米カリフォルニア(California)州のヨセミテ国立公園(Yosemite National Park)で、リスやネズミといったげっ歯類などの小型哺乳(ほにゅう)類が同様に温暖化に反応し、約90年前よりも標高の高い場所へ移動しているか、生息域を狭めているという結果が報告された。

 この調査を率いたカリフォルニア大学バークレー校(University of California at Berkeley)統合生物学教授の動物学者クレイグ・モリッツ(Craig Moritz)氏は「当初は気候変動の影響を研究する予定ではなかったが、ヨセミテの標高の高い場所に生息地を移した生物種が非常に多く驚いた。その原因を考えたときに思い当たったのが気候変動だ」と語った。

 論文では、これまでのところヨセミテの生物多様性は維持されているが、1世紀足らずでの急速な気候変動は問題となりうると指摘している。

 小動物のうち移動したのは半数の種で、残りの半数の種は以前と同じ生息域にとどまっている。これは野生生物の暮らしと相互作用が変化したことを意味するという。こうした変化が急速に起こると「(生態系の)中心的な要素となっている種が急激にいなくなってしまうと、全体の崩壊が始まるおそれがある」とメンバーの1人、ジェームズ・パットン(James Patton)氏は懸念する。

 この研究の比較対照となったのは、カリフォルニア州シエラネバダ(Sierra Nevada)山脈で、やはり同大のチームが実施した1918年の調査。当時は金鉱ブームと過剰な放牧で山頂の積雪地帯の範囲が狭まりつつあった。(c)AFP