【6月7日 AFP】米投資ファンドを率いる資産家ダニエル・ローブ(Daniel Loeb)氏がソニー(Sony)に対し、音楽や映画などエンターテイメント部門の一部分社化を提言したことで、長年同社の弱点となっているエレクトロニクス部門に改めて注目が集まっている。

 ソニー製のテレビやDVDプレーヤーは世界中で売られており、ソニーが電子機器メーカー以外の企業としてみられることはめったにない。だが実際には、同社の主要な稼ぎ頭はハリウッドの映画スタジオやアリシア・キーズ(Alicia Keys)、テイラー・スウィフト(Taylor Swift)といった歌手たちだ。さらにおそらく最大の利益源は、明らかにソニー的ではない、保険商品を販売する金融部門だろう。

 製品価格の下落や、低価格を売りにするライバル企業や米アップル(Apple)などより革新的な企業との厳しい競争に直面しているソニーは、エレクトロニクス部門で巨額損失を計上。過去数年、赤字が続いている。
 
 ゲーム機のプレイステーション(PlayStation)は、米マイクロソフト(Microsoft)のXboxなど競合商品の他、多機能電話(スマートフォン)やタブレット端末向けの低価格あるいは無料のゲームとの競争にさらされている。

 SMBC日興証券(SMBC Nikko Securities)の白石幸毅(Koki Shiraishi)シニアアナリストは「ソニーが現在抱える問題は、容易に生産できるようになった商品を作る事業を続けていることだ」と指摘し、「ソニーの強みはデザイン性やブランド力など数多くあり、高い技術力もある。だが今、必要なのは消費者を惹きつける新たな革新的技術だ」と述べている。

 ソニーは長年、高収益事業を分離すべきだとする圧力に直面していたが先月、ローブ氏が同社のエンターテインメント部門の最大20%を分社化すべきだと提言したことで、こうした構想がメディアで盛んに取り上げられた。

 先週のある米メディアの報道によると、ソニーの取締役会は投資銀行にローブ氏の提案を精査するよう依頼した。この報道を受け、5月31日のソニーの株価は2.09%上昇した。

 ソニーの平井一夫(Kazuo Hirai)代表執行役社長兼CEOはこれまでのところ、分社化の要求に抵抗している。テレビ事業の黒字化を実現したいとし、不調のエレクトロニクス部門は「ソニーのDNA」だと強調している。

 米国とは異なり、日本では株主の積極的な活動は一般的でないが、近年では「物言う」海外投資家による圧力が増大している。(c)AFP/Hiroshi Hiyama